2001年宇宙の旅 [DVD]

監督 : スタンリー・キューブリック 
出演 : キア・デュリア  ゲイリー・ロックウッド  ウィリアム・シルヴェスター  ダニエル・リクター 
  • ワーナー・ホーム・ビデオ
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感想 : 190
5

2001: A Space Odyssey(1968年、米)。
これを超えるSF映画を、自分が生きている間に観ることができるだろうか?
謎の物体「モノリス」に導かれて木星へ旅立った宇宙飛行士の運命を、サスペンスフルに描いたSF映画である。監督は鬼才スタンリー・キューブリック、脚本はSFの巨匠アーサー・C・クラーク。SFファンなら必見の作品である。

何よりもまず映像が驚異的だ。現代でも全く古びていないどころか、近年のSF映画と比べてもはるかに斬新である。理由は少なくとも3つあると考える。

1)科学的考証の正確さ。
NASAが全面協力したという。IBMも途中まで協力している(後述)。
2)卓越したデザイン感覚。
惑星の配置、宇宙船の曲線美、赤と白の対比などに、絵画的な美しさが感じられる。元カメラマンという監督の経歴が関係しているのかもしれない。
3)ユニークな撮影技術。
宇宙空間らしさを表現するため、カメラの露光時間を極端に長くし、1秒の動画の撮影に4時間かけるという、常軌を逸した撮影方法を採用したらしい。

個々のシーンでは、ヒトザルが投げた骨が宇宙船に切り替わるモンタージュが有名。人類史を一瞬で俯瞰する「映像的比喩のお手本」として名高い。個人的には『美しく青きドナウ』の旋律とともに、優雅に回転する宇宙ステーションが好きで、何度も繰り返して見た。

登場人物としては、宇宙船に搭載された人工知能HAL9000(通称ハル)が重要だ。木星探査計画を確実に遂行するためにクルーを皆殺しにしようとした、ちょっと危険なコンピュータである。最終的には、生き残ったクルーがハルの高次中枢回路を切断して機能停止させるのだが、そこに至るまでの緊張感が凄い。〈思考〉を唯一の存在価値とする者の思考中枢を破壊するという行為。血は一滴も流れなくとも、これは確かに殺人行為なのだ。ある意味では、フィジカルな殺人より残酷かもしれない。殺さなければ殺される状況での正当防衛なのに、どうしても人間の方が悪役にみえてしまう。映画制作に協力していたIBMは、この筋書きを知って『2001』から手を引いたという。コンピュータ会社としては無理もない話だ。

終盤の20分はエキセントリックな映像の嵐で、膨大なイメージの奔流にめまいを感じたのを覚えている。一方、言語的情報はゼロである。「説明を聞くな、見て感じろ」ということらしい。たしかに脳の普段使っていない部分を使ったような気がする。ラストの『ツァラトゥストラ』を聴きながら、「もしかしたらこの映画自体が、知的進化を促すモノリスなのかもしれない」とふと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: DVD
感想投稿日 : 2015年10月6日
読了日 : 2015年9月18日
本棚登録日 : 2015年9月18日

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