ヒーローを待っていても世界は変わらない (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2015年2月6日発売)
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感想 : 13
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本書は、「日本では、主権者であるはずの国民が主権者として振る舞っていない」という問題≒国民の政治への無関心を、政治不信を理由に無関心を正当化する一部の国民への批判や、無関心が故に生まれるヒーロー待望論の解説を交えつつ論じ、積極的な政治参加を促す啓蒙的な作品。

しかし、議論が基本的な国内における要因のみを考慮して展開されている点(例えば、著者は日本国民の政治離れの一因を議会制民主主義の特徴である合意形成までの議論の煩雑さに求めているが、同じく議会制民主主義を採用している国でも日本より政治への関心が遥かに高い国はあるのでは?と疑問に感じた)や、あくまで著者の貧困支援という経験に基づいた視点に立っているため提言(国民が議論できるプラットフォームの開設など)の実現可能性に疑問が残る点など、一般論として論じるには不十分だと感じた。

他方、ヒーロー待望論についての考察は興味深かった。作中ではヒーロー=切込隊長の資質として、①悪=既得権益を名指しする力、カリスマ性、②反対意見を無視する大胆さ、③即断即決力の三点を挙げつつ、その具体例として小泉元総理や橋本元大阪府知事を挙げていたが、2021年現在においては、河野行政改革担当大臣が上記の資質の全てにぴたりと当てはまっていると思われる。

そして、著者がヒーロー待望論の危険性として警鐘を鳴らす、ヒーローが何が既得権かを断定してしまうため、一度既得権の烙印を押されてしまったら議論が行われずに悪者扱いされてしまう可能性がある点についても、押印廃止の一件で問題になったとおりだと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治・社会
感想投稿日 : 2021年5月1日
読了日 : 2021年5月1日
本棚登録日 : 2021年5月1日

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