不完全都市: 神戸・ニュ-ヨ-ク・ベルリン

著者 :
  • 学芸出版社 (2003年8月10日発売)
4.00
  • (1)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 18
感想 : 4
4

 不完全都市というのは、自分なりに理解すれば、ホームレスとかスラムとかを抱えつつ、世界都市として存在している都市をいうようだ。

 被災後の神戸、ニューヨーク、特にグランドゼロ、ベルリンを例に具体的かつ批判的に都市計画を語っている。

 グランドゼロの港湾局の問題、ベルリンの統一後の混乱もおもしろいが、ここは、被災後の神戸の評価について、襟を正したい。

(1)区画整理、再開発の地域では人口回復が遅い。(p45)

 今回の被災で、本当に手続や権利調整に時間のかかる土地区画整理事業を全域的にかけていいものだろうか。神戸の反省がいかせれてるか?

(2)神戸市は建築行政の新しい制度として、1999年に近隣住環境計画を条例化し、道路幅員などに関係する基準を緩和した。(p84)

 不勉強だった。早速調べてみる。

(3)公権力の都市計画は「合意形成」に基づく正統性の再生を必要とした。しかし、都市の場所が原理的に競合の空間を生み出すとすれば「合意形成」はあくまで仮構物でしかありえない。(p38)

 これは、法定事業で短期的に合意形成をする以上、先生の指摘はむしろ制度に内在したもの。ただし、今の復興計画の案はそのまま都市計画として強制力を与えていいものかどうかの検証は必要と考える。

 そのほか、ベルリンの記述など、大変おもしろい。今度は、ベルリンのまちあるきに出かけてみたい気分になった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 都市計画
感想投稿日 : 2012年5月28日
読了日 : 2012年5月28日
本棚登録日 : 2012年5月28日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする