辻邦生氏の深い幸福と興奮に満ちたイタリア旅行の記録。
真夏の光に照らされたイタリアは、若々しい活気が漂っていて、固定観念から脱して自由に愉快に生きる活力に溢れている。スタンダールの専門家である著者の描くイタリアが、あまりに『パルムの僧院』で出会ったイタリアと似ていて、牧歌的で幸福感が充満していた。
著者も触れているイタリアと日本・ドイツ・イギリスとの違いは、やっぱり大きく捉えると、年中食べ物に困らない亜熱帯地域と、良い季節に計画的に食べ物を蓄えないと冬を越せない温帯という、環境が培ったDNAの違いなのか。将来のことを心配しすぎずに、今を目一杯味わい尽くせる環境と特権。
ただシチリアは文化的に面白そうだなと無邪気に思っていたけど、文化の交差点であるいうことは血塗られた歴史を背負っているということでもあることを実感し、見方が浅かったと反省。
イタリアに詳しくないために、ところどころ説明くさい部分がついて行けないと感じるところもあったけど、総じて楽しい読書だった。須賀敦子さんの文章でも出会う地名(アッシジやシエナ)にも会って、須賀敦子さんの本がまた読みたくなった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
エッセイ
- 感想投稿日 : 2022年6月12日
- 読了日 : 2022年6月12日
- 本棚登録日 : 2022年6月12日
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