月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 207)

  • 早川書房 (1976年10月1日発売)
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感想 : 57
4

王道SFです。

地球の人口過剰により、人類は月に移民(半分は流刑)を送り込み、人々はそこで生活をするようになる。 固い岩盤の下に掘られたドーム上の空間の中で、穀物を作ったり家畜を育てたり、氷を掘り当てる事も出来た。 しかし月世界はいまだに地球政府に搾取され続けていて、月の人々はその圧制に苦しめられていた。
そして舞台は2076年の月面上。
地球からの独立を掲げた革命を起こそうと大きなうねりが起こってゆき。 それに心ならずも巻き込まれて、先頭に立ったのは一人のコンピュータプログラマと、彼によってメンテナンスされている大型コンピュータ。 しかしこのコンピュータは自ら思考する能力を持ち、組織の仮想上のリーダーになってゆく。

カリスマな人物が出てくるわけでもなく、ドラマティックな展開があるわけでもなく、 でも引き込まれて読みきってしまったのはやはり巨匠の筆力のなせる技なのでしょうか。
それでも月世界の生活様式とか、交渉上の駆け引きとか細部に渡って作りこまれてます。
なんて言うんでしょう。層が厚い?
たとえば見せたいのは表面の一番表の布一枚だけとしても、その下に何十枚もの違う色の布とか、はたまた箱とかボールとか全く関係ないものまでたくさん隠し込まれているみたいな。
なんだかよくわからない例えだな(笑)
きっと、世界観というか設定が、本文中で書かれている以上にびっちりと作りこまれているんでしょう。
そういうトコがしっかりしてないとこういう厚みみたいなものは出ないのだと実感させられた作品。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年2月4日
読了日 : 2013年2月4日
本棚登録日 : 2013年2月4日

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