3人の父親、養母、慕った兄との関係を丁寧に描いていくことで秀秋の気持ちに寄り添っていく。
地位も名も自分でなしたものではない。苛立ちを感じつつも諦めが覆う。
そんな13歳の多感な年頃に彼は気づいてしまう。
偉大と恐れ敬ってきた秀吉が老いた猿なことに。
小早川の父と叔父の鮮烈な出会い。
家族と慕った兄の死。
「人の縁は歳月の長さではなかろう」「なにを貰い受け、なにを捧げんと想うたか。その多寡と想いの強弱こそが、縁の濃さを決めると我は想う」
秀俊から秀秋への改名。そこに籠めた想い。
朝鮮出兵で父が指摘した自分の中の獣に気づく。
「死した父に恥じぬ男になるため、秀秋は今ここにいる。」
家康にも対等であろうとし、小早川家を守るために関が原へ臨む。
関が原戦。
秀秋は松尾山山頂から戦を俯瞰している。
絵巻を眺めるように戦の進行が描かれる。
ついつい絵本「動物関が原」を開いてみてしまった。
キリキリと弓を引き絞るように。
矢を放つ瞬間はいつなのか。
読みすすむうちに、歴史ものは未来が見えてしまうのがどうにも切ない。
凛々しく逞しく成長していくほどに。
数々の戦国ものの本でドラマで弱弱しく卑怯で卑屈に描かれる秀秋像がここまで凛々しい青年に描かれるとは!
歴史とは勝者が紡ぐ過去。本当はどうなのか、ものすごく気になる。
秀次がキレイすぎかな。
でも、隆景、秀包、重臣の頼勝、正成の漢気に惚れる。戦国ものはやはり漢を語る物語だもの。
北斗のあの人とか某本宮さんとかの漫画になりそうだった。
「理は心中の獣を殺すためにあるのではない。胸の奥の荒ぶる獣を飼い馴らすためにあるのだ」
歌って踊る二人組が「Shake it ガ原!」で「秀秋!」を連呼している。
聞きながら、家康の思い通りになってないよーとにやにや。
- 感想投稿日 : 2015年9月30日
- 読了日 : 2015年9月30日
- 本棚登録日 : 2015年9月14日
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