作者が、動物は皆同じ大きさ、同じ動物は複数登場しない、人間は出てこない、物語の中では誰も死なない、と4つのシンプルな規則に基づいている作品群の一つである。
好みが分かれそうだが、読んでいて、星の王子様を思い出しました。
メディア掲載レビューほか
ネガティブすぎるハリネズミの姿が共感を呼んで9万5000部。本屋大賞受賞の海外小説
自分のハリが大嫌いで、ほかの動物たちとうまく付き合えないハリネズミ。突然みんなを自宅に招待しようと思い立つが、本当にやってきたらとんでもないことが起こりそう。せっかく書いた招待状を出さないまま、ハリネズミの妄想と不安は広がっていく……。
そんな風変わりなシチュエーションを描いた海外小説が、静かな共感の輪を広げ、部数を伸ばしている。
「〈キミたちみんなを招待します。……でも、だれも来なくてもだいじょうぶです。〉という招待状の文を読んだ瞬間、この本はおもしろいと確信しました」(担当編集者の須貝利恵子さん)
著者のトーン・テレヘンさんは、オランダで子供から老人までとても幅広い読者を獲得している、国民的作家。本書の日本での読者も、30代・40代の女性を中心に、高校生から年配の男性まで、性別・年齢を問わない。谷川俊太郎さん、江國香織さん、小川洋子さんら著名人からも共感の声が寄せられ、全国の書店員からも猛プッシュを受け続けている。つい先日には、定評ある本屋大賞の翻訳小説部門で1位を獲得した。
「何が面白いのかという人もいますが、好きな人にはたまらない1冊なのではと思います」(須貝さん)
8月には新たな訳書が刊行予定。また、長らく絶版となっていた既訳の『だれも死なない』も復刊の予定があるという。著者の名前が日本でも広く知られるようになる日は近そうだ。
評者:前田 久
(週刊文春 2017.05.18号掲載)
- 感想投稿日 : 2024年1月3日
- 読了日 : 2024年1月3日
- 本棚登録日 : 2024年1月3日
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