(088)揺れる移民大国フランス (ポプラ新書)

著者 :
  • ポプラ社 (2016年2月1日発売)
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感想 : 10

 2015年、フランスで発生したテロ。テロリストは、不満を爆発させた移民なのではないか――テロ以降日本でもあったこのような報道を、筆者はステレオタイプな見方だと述べている。
 「フランス人、三代前はみな移民」というように、フランスは古くから移民を受け入れてきた。そして、そこで対立が生じないようにルールを作り、支援を行なってきた。現在も、移民のための教育やNPOによる支援を通じて、移民を受けいれようとしている。市民もまた、宗教や人種の違いを魅力として楽しもうとしている。その根底にあるのは自由平等友愛というフランスの精神であり、それは今も生き続けている。
 他方で、移民の差別は移民の不満を爆発させ、文化的な対立をもたらすかもしれない。国際的な移民の押し付け合いが続けば、緊張状態は思わぬかたちで瓦解するかもしれない。しかし、国として移民を受け入れる能力には限界があり、そこにはリスクもある。当時移民の通行を許さなかったハンガリーは国際的に非難された。だが人口10万人あたりの移民受け入れ数で、ハンガリーはフランスやドイツといったヨーロッパ諸国のなかで群を抜いている。移民を受け入れるか否かという議論もあれば、移民を受けいれようとしても受け入れることができないということもある。そこに移民問題の難しさと希望がある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2016年4月14日
読了日 : 2016年4月14日
本棚登録日 : 2016年2月28日

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