この作品を後編纂だから資料的価値しかないとする人もいるが、そんなこともないだろうと思うのだ。自分ただひとりという可能性もなくはないが、「幸福な死」をひとつの立派な文学作品として愛してやまない人間がこの世には存在するのだから。
カフカの作品群がそうであるように、またこの作品も偏見なく身近に親しまれるものになってほしいと願う。
乾いた文体、海、太陽、死、そして「神」。
作者と読者の距離は「異邦人」のそれよりも近い。この作品は自分にとって「神」に見張られていることを悟っているメルソーが、自らの死場所を探し求める旅のように思える。GODの文字が絶えず空で明滅している、そんなイメージ。水浴は彼にとって一種の自己放棄だし、その氷のような冷たさは神の愛のように身を焼くものなのだから。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年5月24日
- 読了日 : 2017年5月24日
- 本棚登録日 : 2017年5月24日
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