恋愛中毒

著者 :
  • KADOKAWA (1998年12月1日発売)
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四十代半ばに見える謎の事務員、水無月さんの過去。

幼いころの水無月さんを母親は劇団に入れた。水無月さんはつらかったし、母親を恨んでいた。大学進学で東京に出てきた後、群馬の実家に帰ることはほとんどなかった。
大学で親しくしてくれた萩原くんに執着した水無月さんは学内で噂になるほどのストーカーになっていた。ぼろぼろになっていた水無月さんは藤谷くんに優しくされ、今度は藤谷くんとべったりになる。その後、藤谷くんと結婚したが、彼が飲み屋の女と仲良くなっていると信じ込んだ水無月さんは執拗な嫌がらせを繰り返し、逮捕された。執行猶予付きの判決を受け、水無月さんは離婚した。
弁当屋の仕事を紹介されて健気に働いていたが、著名人の創路功二郎に見出された水無月さんは彼の秘書兼愛人になっていく。
他の愛人たちが離脱していくなか、水無月さんも創路功二郎に避けられ始める。水無月さんは彼の娘を自宅のトイレに監禁し、実刑判決を受け、刑務所に二年半服役した。
その後、萩原くんの会社の事務員になり、創路功二郎の愛人付き合いも年に数回だが続いている。

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やり場のない恋愛感情、あるいは怨念が体内でパンパンに膨らんで、自家中毒みたいになってしまう人だったのかな、水無月さん。

恋に悩みすぎて、その苦しみから解放されたいばかりに意味不明な行動に走ってしまった経験が自分にもある。水無月さんを変人扱いしたくはない。犯罪行為が良いとかわるいとかそういうことではなく、理解できる。そう思った。
粘着とか執着といった言葉で表される恋愛感情は一般的にいいものではない。けれど、行き場を無くした恋愛感情は執着心に変わることがある。みんなどうやって感情を整理しているんだろう。時間が解決してくれることもあれば、新しい相手が見つかることで自然と解消されていくこともあるんだろう。
恋愛ってのは必ずしも自分対相手ではなくて、自分内部で生まれてしまった感情をどう対処するか、つまり自分のみで完結することなのかもしれないな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 山本文緒
感想投稿日 : 2022年8月8日
読了日 : 2022年8月8日
本棚登録日 : 2022年8月8日

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