袋小路の男

著者 :
  • 講談社 (2004年10月28日発売)
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『袋小路の男』と『小田切孝の言い分』は高校のイケてる先輩に恋した女の十数年間の話。
大学に進学して普通に就職した地味な女と小説家になろうともがきながらバイトする男。ふたりは付き合っていないし、セックスもしない。男が入院したときは毎週末、女は東京まで通う。

『アーリオ オーリオ』は清掃工場の制御室で働くおじさんが兄の娘の女子中学生と文通する話。
女子中学生は未来を思う。男は過去の恋愛を思い、遥か彼方にある星々を思い、存在しない星を思う。

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『袋小路の男』と『小田切孝の言い分』で描かれる男女関係では、必修科目みたいにセックスする必要はないのだと教えてくれる。
『アーリオ オーリオ』では自分を好きになってくれた女性を、開いた窓から飛び込んできた蝶と表現する。そして、ふたりの関係が終わったあとは、開いたままの窓から出て行ってしまった蝶が戻ることは二度とない、と表す。

間違ってるかもしれないけど、誰かの価値観ではなくて自分の価値観にしがみつこうとする感覚がすごくいいと思った。やるせない感じがたまらない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絲山秋子
感想投稿日 : 2024年2月21日
読了日 : 2024年2月17日
本棚登録日 : 2024年2月17日

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