妻の超然

著者 :
  • 新潮社 (2010年9月1日発売)
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超然とは、何かをとらわれたり、こだわったりしないこと、だそうだ。

『妻の超然』は自分の夫が間違いなく浮気していると確信し、自分は妙なストーカーに悩まされている、と思い込む専業主婦の話。

『下戸の超然』は酒の飲めない男が自分の部屋に来るたびに酒を飲む恋人との感覚の違いに悩む話。

『作家の超然』は首にできたしこりを取る手術を受ける作家が地方都市で暮らすことを選んだこれまでの日々を思う話。

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超然とは、流行とかその場の空気に流されないで、自分のスタイルを貫くという意味だと思っていたが、どうなのだろう。ほんとうにそれが合っているのかはわからない。

二番目の話、『下戸の超然』の感想を書く。

つくばの工場で働く男が、職場で女と仲良くなり、恋人になっていく。その流れの描写がとてもよかった。
”彼女が去ると僕は猛烈に彼女と話足りないことを感じた”なんて具合に心の動きが描かれていた。恋の始まりで浮き足立っている感じだ。
恋人になってからも男は女が酒を飲むことについては何も言わず、自分は酒を飲まなかった。女がやっているNPOの活動にも何も言わなかった。しかし、女は男と酒を飲みたかったし、男にもNPO活動に参加してほしいと思っていた。
男は気づいていなかったが、女は男の態度に我慢していた。

どちらがわるいわけでもなく、あえて言うならどちらもわるいと言うことだろうか。
恋愛の終わりにおいて、どちらか一方が極端にわるいということはあまりない。
彼らの場合、男と同様に女も超然としていればよかったのではと思うが、そうすると一緒にいる意味すらなくなってしまいそうな気もする。

ある程度のところで線を引き、干渉しないようにしないとお互い疲れてしまう。相手が超然タイプの人間であっても、そうでもなくても、過干渉は好意にはならない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絲山秋子
感想投稿日 : 2024年3月24日
読了日 : 2024年3月23日
本棚登録日 : 2024年3月23日

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