寄宿学校施設ヘールシャムで生活するキャシーたちは、施設内の規則に従いながら学び、詩や絵などを制作している。
やがて18歳となった彼らはヘールシャムを離れて外の生活に慣れ始める。
彼らはクローン人間であり、臓器を提供する使命を持って生まれてきた。
臓器提供を始めるまで彼らは介護人となり、臓器提供者の介護にあたる。
ヘールシャム内で深く愛し合った男女は提供を始める時期に数年の猶予が与えられる、という噂を信じたキャシーとトミーは彼らの創作物を回収していたマダムの元へ向かう。
そこで彼らが知った事実。
彼らの創作物は、臓器提供者として生まれた彼らの人権運動につかわれていたこと。今やその運動も下火になっているということ。
真実を知ったトミーは感情を抑えられない。
他人に臓器を提供する使命を持って生まれた彼ら。
彼らの身体は他人のもの。
では、心は誰のもの?
クローン人間の人権を思う。
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普段は意識しないことだけど、人間はいつか死ぬ。いくら医療が発達しても何百年も生きられるようにはならないだろう。人間じゃなくても生きものは死ぬ。ぼんやりとしているけど、当たり前のこと。
ヘールシャムやその他の施設で、育った彼らは臓器を提供する使命を持って生まれてきた。
彼らに待ち受けるのは、はっきりとした使命と、明確な死。ぼんやりなんてしていない。
まるで死ぬために生まれてような彼らが、コミュニケーションを楽しみ、愛を育み、架空生物を作り出す姿はあまりにも残酷で、とてもつらかった。
ルースもトミーも誰かに認めてほしかったんだと思う。ヘールシャムの外にいる人間たちに自分たちを認めさせたかったろう。キャシーはその客観的な視点を持ってるから介護人として評価されたのかな。
とても重くて、つらい話だった。
でも、死ぬことが決まってるのは彼らだけじゃない。人間全員いつか死ぬ。そう決まっている。うぬぼれるな。
非常に重要なメッセージを掲げた話だった。
- 感想投稿日 : 2013年10月20日
- 読了日 : 2013年10月13日
- 本棚登録日 : 2013年10月13日
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