おじいさんの思い出

  • 文藝春秋 (1988年3月11日発売)
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感想 : 25
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”僕”が学校に入る年齢になる頃、もっといい仕事と暮らしを求めて父さんと母さんは山の向こう側の町に移ることを決めた。それはおじいさんとおばあさんとの別れを意味していた。
ハイスクールに上がった”僕”のもとに届いたのは、おじいさんが亡くなったことを知らせる手紙だった。
そして、”僕”はおじいさんの言う秘密の意味を理解する。他人とうまくやり、愛し愛されて人生を楽しむことが彼の言う秘密だったのだ、と。

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今まで暮らしていた場所を出ていく時の、あの何とも言い難い寂しさ。後ろ髪を引かれる思い、という言葉はあのセンチメンタルな感情を形容しているんだろうか。
今までに三回引っ越しを経験した。この先も人生が続くならあと数回は生活する場所を変えることになると思う。そのたびにあの寂しさに襲われることは間違いない。これまでもそうだったように。

生活が変わるときの不安と期待が混ざり合った複雑な気分を思い出しながら読んだ。名残惜しいような気持ちになって意味もなく柱を触ってみたり、家具を運び出して広くなった部屋が他人のような顔をしていたりして、センチメンタル過剰になってしまうんだよな。
ただ、新しい生活に慣れると以前の暮らしぶりを思い出すことすらなくなってしまう。
色んな記憶を捨てながら生きることが正しいのかはわからないけど、これからもそうやっていくしかないんだろうな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 世界文学
感想投稿日 : 2019年11月10日
読了日 : 2019年11月10日
本棚登録日 : 2019年11月10日

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