晩年の作品が集められている文庫。
川崎長太郎の若いころの作品は、自分の価値のなさ、なんで生きてるんだろうって自問自答しながら世の中の隅の方で細々暮らしている感じなんだけども、晩年は、死に抗っている感じがしている。
年老いて、体が動かなくなっていく中、そして年の離れた奥さんを思い、…「老残」で、何物にも拘束されない人間が一番幸いだと叫びたい、という一文が、長太郎の正直なところなのだろう。
私は中年以降の長太郎の作品が好き。
性格的な問題もあるし(笑)やはり年を取った分だけ味わい深くなっているというか。
難しい言葉もないし、表現もないし、相変わらずの私小説なんだけれども、読んでいて心にすっと染みこんでくる。若い頃のは、「もう、だらしない!」って思っちゃったりするんだけど(笑)
つげ義春の本を読まなかったら、知らないままだったろう本。
こういう出会いがあるから、読書が楽しい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2017年10月24日
- 読了日 : 2017年1月11日
- 本棚登録日 : 2016年10月29日
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