(*01)
漫画的であり喜劇的でもある点でコミカルであり、衒学的な響きも求めた点でミステリー(*02)やコミックこそが照らす世界もあることを感じさせる。
漫画的なものは、イラストよりもイラスト的なセリフ(*03)に現われており、文字でない記号や愛称や一語のセリフがそれであり、そのセリフによるかけ合いはミニマルかつシンフォニックな域に達している場面もある。
一方、漫画で言うとキャラクター造形や背景の画の部分が、小説という文字テキストでは地の文になるが、ここに現代における個を示すような主体観/世界観を織り交ぜている。地の文には、主人公の心理を示す文も挿入されているが、やや興味深いのは、登場する天才的予言者のセリフと主人公の心理的な地の文が交錯する場面がところどころに現われ、吹き出しと背景の越境という問題系を批評的に表現していることだろう。
(*02)
ミステリーの常套である密室性、怪奇性や、登場人物の珍奇性、問題解決における転回性は備えており、これらにより進行されるストーリー自体は、いくぶん普通な感がある。しかしこの普通の事を遊ぶ姿に文学性をみる。
(*03)
セリフがあっけらかんとしており、軽くて、明快で、そこそこの正しさを有している点で、lightでありrightでもある。これがライトノベルを基礎づけているように思う。言葉遊びは現代文学に欠かせない要素であり、本書にもその影響は随所に見られるが、文字を絵に意識的に近づけている点が本書の卓越ではないだろうか。字は読みにくいが、絵はみやすいのである。
- 感想投稿日 : 2014年12月21日
- 読了日 : 2014年12月13日
- 本棚登録日 : 2014年10月11日
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