種の起源 (下) (光文社古典新訳文庫 Dタ 1-2)

  • 光文社 (2009年12月20日発売)
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感想 : 44
5

ダーウィンの言わずと知れた名著、下巻。
必ずしも、本著の全てを理解した上で☆5つ!というつもりはなく、むしろ手に余る1冊ではあったものの、ダーウィンの偉業の片鱗が垣間見えた(と感じられた)ことでこの評価をつけてみました。
わかったつもりになって言ってしまうと、本著は「ダーウィンの教会とのケンカの道具(笑」であり、同時に「問いを生む本」だというコトです。

本著、一般向けに書かれたはずの本としては、妙に細かいところを回りくどく論じているように思えてしまうけれど、解説を読んで教会との論争があった旨を知り、「教会の創造説よりも、自分たちナチュラリストの方が創造主の意図を正確に汲み取れますよ」という宣伝だと思えば肯けるような。
そして同時代の学者の論に触れまくっているのは仲間を増やそうとする営みなのでは?種と変種の判断は最後にはナチュラリストの匠の目に委ねているように見えますが、ここだけはロジックを超越しているようにも感じてしまいます。
しかし、先入観なく大量のファクトを収集し、その中から一般的な「規則」を見出そうとした営み。ダーウィンは「種は神が作ったので不変」という当時の支配的な考え方に必死に挑んでいて、その姿はまるで中学校の熱血教師バリの強い信念を感じます(笑

そして、本著の「問い」が後世の学問を発展させた。
問いはダーウィン自身が本著内で述べているものもあれば、読み手が想起させられるものもあり。
前者について、本著内では「わからない」「曖昧だ」と明記している箇所が結構あり、このダーウィンが投げたバトンが、後世の新たな学問分野の発展や、プレートテクトニクスに繋がったのだと思うと、素直に「わからない」と表明することが、後進が解いてやろうと思う課題になるんだなぁと感じました。
後者について、例えば個人的には、人間の遺伝的多様性は時とともに狭まっていって弱体化するのか、それとも自然体で形質が徐々に変化していき地球上で強い種であり続けるのか?という問いが浮かんだんですが、まぁこれは最新の遺伝学の本(の新書とか(笑)で解決しようかと思います。

それにしても、当時の教会に異説を唱えるのはそれは勇気のいることだったんだろうなぁと。ダーウィンは年月をかけて(時代は違いますが)ガリレオ・ガリレイの二の舞にならないためにロジックを整えてきた訳です。
回りくどいように思えたり、こんなのは程度問題では?と思える(素人の浅はかさかも、ですが…)ことにも拘る論理展開は、想定した反論を全て先回りして潰すため。
だからこそこれだけのボリュームになった訳で、読了時にはそこそこの達成感があり・・・個人的には、根性試しの作品でもありました(笑

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: なんとなく興味ある圏
感想投稿日 : 2022年10月30日
読了日 : 2022年10月30日
本棚登録日 : 2022年10月24日

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