商社から故郷の町長に転じた主人公が、借金まみれの町の財政再建をめざすストーリー。
本著の帯にあるように、衆院議長を務めた伊吹氏が石破茂氏に「地方創生大臣なら読まなきゃダメだよ」と薦めたという1冊。文庫で500ページ弱の分厚さでしたが、読ませる力があってスムーズに読了しました。
(調べたらWOWOWでドラマ化されていたようですが、主人公が大泉洋?イメージ合わないなぁ。。)
さて本著、確かに地方創生を考えるにあたっては重要な1冊だと思います。
過去、都会に追い付こうと必死に整備したインフラが、結果的には都市への人材流出を招き、各市町村の負債を増やすだけになったという皮肉。
負債解消の切り札として主人公が打ち出した「老人向けテーマパークタウンの誘致」というのも肯ける話です。
実現に向けたしがらみが多々あったり、都会と地方で文化の違いがあったり、というのもリアリティを感じる描写でした。
ただ、同時に感じたのは、著者が提示したこのケースは恵まれた条件下における1事例に過ぎず、全ての地方自治体が同じやり方を取ったら途端にレッドオーシャン化するので、各自治体が「高齢者向けで生きる」「観光客向けで生きる」「発電所で生きる?」等のコアコンピタンスを考えないといけない時代なんだろうなぁと。。
ストーリー展開としては、思いのほか一本調子。
障害も無いことはないのですが、もっと地域ならではの大変さに直面するんだと思ってました。
町議会のドンがした昭和っぽいハラスメントに対して、商社の若手が思いっきり昭和な返し方をするくだりはどうなんだろうか。。いっそSNSなりライブ配信なり、と思ったのですが、これは敢えてなのかしら。
あと、終章で都市からの人口流入が始まったくだりで、地元の飲食店の味が「ソフィスティケイトされて来た」というくだりはどうなのかなぁと思いました。
単純に都会と同じものを出すというのは、地元の文化が消えるだけなんじゃないか。
ついでに、主人公の奥様の扱いがほぼ空気…。
と、諸々言ってしまいましたが、基本的には安心して読めて面白いビジネス?(自治体?)小説です。続編らしきものもあるようなので、読んでみようかと思います。
- 感想投稿日 : 2021年1月11日
- 読了日 : 2021年1月11日
- 本棚登録日 : 2021年1月11日
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