百年の孤独: Obras de Garci´a Ma´rquez1967 (Obra de Garc´ia M´arquez)
- 新潮社 (2006年12月20日発売)
とても好きな作家が、人生を変えられた小説の一つに挙げていて、それは読まなければと生活費を削って本屋で買ったのが10年前。それ以来ずっと本棚のインテリアになっていた百年の孤独。やっと読めた。もっと早く読んでおけばよかったし、今読めてよかったとも思う。いずれにしても、読んでなかった頃にはもう戻れない。
「長い歳月が流れて銃殺隊の前に立つはめになったとき、恐らくアウレリャノ・ブエンディア大佐は、父親のお供をして初めて氷というものを見た、あの遠い日の午後を思いだしたにちがいない。」
ぜんぶ読み終わって一文目からまた目を通すと、ああそうか、すべては初めから終わっていたんだなと気付かされる。ブエンディア家の人々は百年近いあいだ、マコンドの村で確かに息づいて歴史を刻んでいたはずなのに、そしてその場所で、読者の僕は同じ時間を過ごしていたのに、読み終えた最後には僕にもきちんと孤独が待っていて、寄せた波が大きな砂の城を平らな砂浜に変えてしまうように、五感を使って見ていたリアルな夢から覚めたような気持ちになる。
暴力的な自然や政治、ジプシーの錬金術や幻想、宗教、禁忌、楽園的な性、ラテンアメリカ文学の粋が全部詰まったマコンドは、予定された結末に向かって時計の砂を落としていく。世代を跨いで繰り返し名付けられるアルカディオとアウレリャノの歴史は、まるで螺旋を描く対照的な二色の業のように物語の中心にそびえ立つし、その間でビビッドな挿し色を放つ妖艶な(そしてすべからく長命な)女性たちも良い味出してるし、それぞれにそれぞれの孤独があって、何度も家系図を見返す読みにくさを超えた先に、全体小説ならではの凄まじい読後感が待っている。おなかいっぱいなのに、ぜんぜん苦しくない。もっと食べたいけど、同じお皿には出会えないだろうなという確信。ただの名作だった。
- 感想投稿日 : 2019年6月29日
- 読了日 : 2019年6月29日
- 本棚登録日 : 2019年6月29日
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