1945年8月9日 長崎に二つ目の原爆が投下されたその日、ドイツとの戦いに勝利を収めたソ連軍が、170万人の大軍をもって満州国に攻め入った。
日ソ中立条約を頼みとし、主な戦力を南方に転進させていた関東軍は、ひとたまりもなく蹂躙され、有力な後ろ盾を失った満州国は、崩壊する。
当時、満州国の首都新京特別市には15万人以上の日本人が暮らしていた。
新京市からは、まず軍人とその家族が姿を消した。官吏とその家族、そして出征した官吏の家族が後に続く。
しかし、この時点ですでに、日本国は満州国の国民を保護する有効な手段はもっていなかった。さらに、その他の一般国民は、日本国によって捨て去られた。
本書は、この、脱出に向かうことはできたが、実質的に日本国の手助けを受けることができなかった、新京からの官吏およびその家族の脱出についての記録である。
軍人に続いて首都を脱出した官吏たちは、日本への帰還を試みるが、途中朝鮮の分断により故郷へと続く南下の道を絶たれる。
そして、38度線に阻まれた彼らもまた、日本国から捨てられ、忘れられる。
戦後70年、当時の記録に残らない記憶をもつ方たちが、生涯を終えつつある今日。先の戦争で何が起こったか。国民はどのように扱われたか。国は、軍は、官吏は、そして新聞等メディアは何をしたか。そういったものに向き合うことができる時間は、もうあまり残されていない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2015年9月15日
- 読了日 : 2015年9月15日
- 本棚登録日 : 2015年9月15日
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