育児や保活に悩む、共働きの夫婦の姿を描いた5編の短編集。
イクメン、ママ友、保活、お受験、お誕生日会、仕事との両立、親との育児方針の違いなど、今どきのテーマについて、当事者だけが体験するであろう悩みや葛藤がリアルに描かれている。
「他のママ友に知られたくない秘密」「保活の裏技」「お受験のジンクス」……、世間一般から見たら他愛もない話なのに、情報共有が限定的な世界では視野狭窄に陥って深刻さや重みが増し、時にはどんでん返しのようなあっけないオチが待っていたりする。最初の一編を読み終わった時には、育児をテーマにした日常ミステリーかと思ったくらい。
作者の実体験や周囲に聞いた話が少しはベースになっていると思うが、それらも含めて育児に懸命な大人たちを、鋭い視線で、かつ明るい希望を持たせて軽やかに書いている。実体験のない者には共感できる部分より新鮮な驚きの方が多いのだが、なんでも小説にしてやろうとする作者の新境地がまた開けたようで嬉しい。
夫である裕を主人公にしたことで、女性に任せがちな育児に関する新たな発見や驚きが何度も登場し、「世の男性は少なくともこのように感じて行動してほしい」という、願望というか応援が込められている気もした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文学・評論
- 感想投稿日 : 2017年7月17日
- 読了日 : 2017年7月8日
- 本棚登録日 : 2017年7月17日
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