子どもの頃に読んで、その衝撃が忘れられずにいた本。
主人公が平然と享受している管理社会に、読み手の私達はほのかな違和感を募らせていく。色が見えていなかった、ということが明かされたシーンで、思わずページを捲る手を止め、最初から読み直してしまった。色が見えることや音楽が聞こえることは、当時の私にとってはあえて記述するまでもないような当然のことであった。作者はその「当たり前」を逆手に取り、まるで叙述トリックのようにコミュニティの姿を浮かび上がらせる。
大人になって再読し、「これだよこれ」と頷きながら当該シーンに辿り着いた。コミュニティが色を放擲したのは、肌や髪の色による差別をなくすためだったのかもしれない、と今になって思う。コミュニティは清潔で、合理的で、どこまでも穏やかだ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
Novel
- 感想投稿日 : 2020年9月30日
- 読了日 : 2020年9月30日
- 本棚登録日 : 2020年9月30日
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