サヨナラ、学校化社会

著者 :
  • 太郎次郎社エディタス (2002年4月1日発売)
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感想 : 42

学校の弊害や、それによって生み出された生徒たちが学校化社会を作っていることに対して警鐘を鳴らしている本。学校的価値、業績原理と国民化が諸悪の根源であるとしている。いくつかの非常に有意義な発見があった。近代の学校は、国家が整えた1つの制度で、そこで人間がある規格にはめられ標準化されるーーそれを国民化と言うが、生まれも環境もバラバラな人間を、均質な日本国民に仕立て上げていく授業が行われた。同じような国民化の装置として、国民皆兵による軍隊をあげることができるが、この2つはともに、従順な身体を作る装置だと言うことができる。
学校での競争は決して白紙の状態で、公正・平等に行われているわけではない。初めからゴールで差がつくようになっている。ブルデューは、学校とはもともと階層差のある子供たちを下の階層に再生産するための、ふるい分けの装置だ、と言っている。しかし、学校での成績と社会的な階層とは密接に関係していて、上の階層の出身者は成績上位に、下の階層の出身者は成績下位に落ち着く傾向があり、本人の努力とは言い切れないほどの関連性がある。それが学校での成績によって「あいつはがんばってたから」と納得され、社会的にも正当化されてしまう。
イリイチは、学校に行くということはシャドウワークだと言った。あんなにつまらない、かったるい、ストレスの多い一日を過ごしていることを、労働と言わずしてなんというのか。子どもたちは毎朝、カバンを持って出勤しているのと同じである。賃金を払われないシャドウワーカーが、学校在籍中の子どもたちである。
未来のために今をガマンする生き方はやめよう!偏差値の呪縛から自分を解放し、自分が気持ちいいと思えることを自分で探りあてながら、将来のためではなく現在を精いっぱい楽しく生きる。作者からのメッセージはこれにつきる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年3月9日
読了日 : 2015年3月9日
本棚登録日 : 2015年2月26日

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