つぎねふ 山背道を
他夫の 馬より行くに
己夫し 徒歩にて行けば
見るごとに 音のみし泣かゆ
そこ思ふに 心し痛し
たらちねの 母が形見と 我が持てる
まそみ鏡に 蜻蛉領巾
負ひ並め持ちて 馬買へ我が背
(巻十三の3314)
大和から奈良山を越えて山城へ行く道を、よそのご主人は馬でいくのに、私の夫は歩いていく。見るたびに泣けてくる。母の形見の鏡や上質の布(あきづひれ)をもっていって、それで馬を買ってください、という長歌です。
つぎねふは枕詞で、山背にかかるとされています。つぎねがなんなのか、よくわからないのが実情です。植物の名で、ヒトリシズカ(orフタリシズカ)ではないかという説もあります。本書ではヒトリシズカの項目でこの歌が紹介されています。花穂の形から化粧道具の眉刷毛にみたてて、マユハキグサ(眉掃草)という別名もあるそうです。写真がみごと!
万葉集が好きな人。そして植物を愛する人。そんな人にとって、この本は珠玉の一冊となります。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
読みもの
- 感想投稿日 : 2010年8月28日
- 読了日 : 2010年8月28日
- 本棚登録日 : 2010年8月28日
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