ずっと読みたいと思っていたが、難しくて読めないだろうと思っていた。読み始めてやっぱり無理だわと思っていたら、第5章でハンナ・アレントが出てきたあたりから、なぜかグングン面白くなってきた。アリストテレス、ハイデッガー、スピノザとどれほど私に理解できているか分からないが、著者の解説により、私の知りたかったことをこの人たちは語っている、みたいに調子良くなってきて、言葉を逃さないように、長文で抜き出しを行い始めた。いつもならここにそのまま載せるが、長文すぎるのと、引用の引用みたいなのが多いのと、自分の補足みたいなものを足さないと意味不明になりそうなのでちょっと無理。
スピノザの「受動から脱する」部分は最近接している仏教(タイ仏教)の教えに一致しているように思え、驚いた。この部分だけ抜いておく。
"スピノザはいかなる受動の状態にあろうとも、それを明晰に認識さえできれば、その状態から脱することができると言っている。(略)
他人から罵詈雑言を浴びせられればひとは怒りに震える。しかし、スピノザの言う「思惟能力」、つまり考える力を、それに対応できるほどに高めていたならば、人は「なぜこの人物は私にこのような酷いことを言っているのだろうか?」「どうすればこのような災難を避けられるだろうか?」と考えることができるだろう。そのように考えている間、人は自らの受動の部分を限りなく少なくしているだろう。
他人の能力や実績を見て、ねたんでしまったときも、「どのようにして自分はこの人物をねたむに至ったのか?」と問いうるほどに思惟能力を高めていれば、妬みに占領されてしまった変状に変化をもたらすことができるだろう。
この意味では、罵詈雑言を浴びたらそのまま怒りに震えるとか、他人の高い能力やすぐれた実績を見たらそのままねたむといった、変状の画一的な出現を避けることがスピノザの『エチカ』では一つの大きな課題となっていると言ってもよい。" 260ページ
直後に書かれている「自由」に関する考え方も一致する(近い)のかもしれないが、悲しいことにちょっとそこはわからなかった。
頭がグルングルンした。書かれていることが理解できたのかと言われれば、ほとんど理解できていないかもしれないけど、グルングルンしたことは無駄ではなかったように思う。
それに何よりも精神的に救われた。例えば「感情が悲しみの方向に舵を切る」という表現。
私の悲しみや苦しみの元になるものが少し解明されたようで、慰められたような気もする。
- 感想投稿日 : 2020年9月28日
- 読了日 : 2020年9月28日
- 本棚登録日 : 2020年9月4日
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