二人がここにいる不思議 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1999年12月27日発売)
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感想 : 48
2

巨匠の短編を手にする

 楽しみにしていた短編集だ。

 SFの色もさることながら、ブラッドベリの人間味あふれる筋を読みたかった。

 でも、玉石混合というか石ばかりというか・・・。SFとして期待しない方がいい短編集だ。


 23の短編は以下の通り。

生涯の一度の夜
 古き良き時代とでもいうのだろうか。でも、意味が不明なお話。

トインビー・コンベクター
 100年のタイムトラベルにより明るい未来を発見して帰ってきたトラベラー。彼の影響で人類は明るい未来に向かって邁進する。

 100年後、トラベラーは当時の自分と会うタイミングにさしかかる。しかし、何も起こらない。100年前の話は暗い未来ばかりを予測することへの反抗から起こした大きな作り話だったのだ。

 いい話だ。ストーリーには数多くの矛盾を抱えながらも、人類は明るい未来を与えればさぼらずに進歩するという健康的な立場に立ったエンディングは最高だ。

トラップドア
 ちょっとしたミステリー。可もなく不可もなく。

オリエント急行、北へ
 オチが楽しいが、これもふつうの幽霊話。強いていえば、信じてやると元気になるという幽霊がほほえましい。この意味でネバーエンディング・ストーリーっぽいかな。

十月の西
 一人の体にたくさんの人格が・・・というSFっぽいテーマなんだが、消化不良。

最後のサーカス
 趣のあるいい話なんだが、今ひとつ雰囲気が伝わらずに終わったなぁ。

ローレル・アンド・ハーディ恋愛騒動
 きれいなエンディングを見せるラブ・ストーリー。それぞれの家庭を持った二人が出会うシーンはバタフライ・エフェクトのラストを思い出した。

二人がここにいる不思議
 亡き父母をレストランにに招待する。父から「おもしろくない奴」と告白され驚く主人公。父母は食事が終わると墓地に帰っていく。

 主人公はこどもとの会食をキャンセルする。意味が深くてわかりにくい感じだ。タイトル作だし再読の必要があるかな。

さよなら、ラファイエット
 ヴォネガットっぽい雰囲気。戦争体験が色濃く残る老人と隣に住む作家。老人は天寿を全うし、瞬間を切り取った写真が作家の手に残る。

 いい味なんだが、ラストがぴりっとしない。全体的にこんな感じが多いのは、作者より訳者のせいかも・・・。

バンシー
 オカルト作。なんだか意図不明。ひねりもないし直球すぎておもしろくない。

プロミセズ、プロミセズ
 事故死寸前の愛娘を助けるため、愛人との決別を神に約束する男。愛人はキリスト教徒で神に誓ったことを破ることができない。

 ジレンマは「なぜ私より娘を選んだのか」という叫びになる。おもしろいような、そうでないような・・・。

恋心
 火星人が侵略者である地球人に恋をして、会いに行くのだが、結末はどうなるんだろうってな作品。イマイチ。

ご領主に乾杯、別れに乾杯!
 ワイン好きの老人が亡くなり、通夜の席でワインパーティーをという感じ。これもなぁ・・・。

ときは6月、ある真夜中
 意味不明。

ゆるしの夜
 なかなかいいタッチ。牧師が懺悔する感じ。

号令に合わせて
 意味不明シリーズ。軍隊ごっこの父を持つ子の未来はどうなったのか。オチがよくわからん。

かすかな刺
 未来の自分と電車の中で出会う。未来の自分は妻を殺したという。ワクワクしそうなはじまり方なんだが、終わりが全然すっきりしない。

気長な分割
 ブラックユーモアかな。離婚で資産を山分け。ところでこどもはどう分けるのってなオチはおもしろい。

コンスタンスとご一緒に
 これも意図不明。

ジュニア
 なんだがわからないシモネタ。

墓石
 ミステリーかな。はっきりしたオチはあるが、おもしろいとは思わない。

階段をのぼって
 ミステリーとしては非常によくできた内容だろう。ウルトラQにでれるぞ。でも古めかしい。

ストーンスティル大佐の純自家製本格エジプト・ミイラ
 意味不明。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2011年9月15日
読了日 : 2006年8月3日
本棚登録日 : 2011年9月15日

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