ペコロスの母に会いに行く

著者 :
  • 西日本新聞社 (2012年7月7日発売)
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初めて老人ホームを訪れた時の衝撃が
未だに忘れられない。

施設がどうのこうのじゃない。
(ここ、なんか嫌だ…。)
と、感じてしまった自分の薄情さに、だ。

あんなに朗らかでおしゃべり好きだった義母が
長い入院を機に惚けてしまい、
自宅介護が出来なくなった。
そこで、介護施設のお世話にならざるを得ない状況になってしまったのだが、
ああ、
頑張って人生を必死で生きてきた、
その行く末はここ、なのか…?!

眠っているのか
疲れているのか、
何も語らず、ただ大勢で寄り集まっている老人達の姿が
どうにも寂しげに、そして恐ろしく思えて仕方がなかった。

のだが…。

それから何度も訪問を重ねて行くうち、
一言も語らなくなった義母の表情の柔らかさにホッとする自分の気持の変化に驚いた。

語りかけるのは私だけだが、
私の話を聞きながら、時折ニコッと、あるいは声を出して笑ったり。
あの時、義母の意識はどこにあったんだろう?

なんて疑問が
ペコロスさんのお母さんに会えた事で、やっとわかった気がした。

惚けた人は
現在、過去、未来、
あらゆる場所へと瞬時に移動できるタイムトラベラーだったのだ。
ただ、惜しむらくは
凡人である私達に、彼ら(彼女ら)の見ている景色はわからないこと。

でも、
そんな超人タイムトラベラー達が楽しんでいる懐かしい景色を、
想像力豊かなペコロスさんが
なんともあったかいイラストにて
表現してくれたお陰で、
私は
義母が晩年も幸せであったよね、
と、ようやく思える様になった。

介護施設のスタッフさんにも
その後、大変親切にしてもらい、
介護、老後に関しての私の意識も変わっていった。

自分で経験を踏まえなければ、
もしかしたら
彼の作品の温かみ、はわからなかったかも知れない。

みつえさんに出会えて本当に良かった!と心から思えた作品。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年11月19日
読了日 : 2014年11月19日
本棚登録日 : 2014年11月19日

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