低地 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社 (2014年8月26日発売)
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感想 : 65
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ガウリを想う。
祖父母の家で育ち、16歳で両親を交通事故で失う。大学に通う頃には兄しか側にはおらず、ずっと一人で生きていくんだと心に決めている。
結婚後に勉強を続けたくとも、婚家では働き手と見なされる。姑との関係も微妙だ。そしてウダヤンの死。異国へ渡る手段としての再婚の末に、亡夫の子を出産する。
子育てをしながら彼女は「ウダヤンと私の子なのに父親面して欲しくない」/「自分は100%子供を愛しきれない」という背反する二つの思いに挟まれて自らを苦しめている。更にインドで犯した過ち故に、自らを罰し続けている。

失意の底にあった二人が始めた新しい家族の形が、更にまた壊れていく様を読みながら、救いの手や再生を求めてしまう自分がいる。子供と二人で家にいることに耐えられず、束の間の自由を求めて外出することは、どれほどの罪なのか。子供に無償の愛を注げない母親は許されないのか。

家族が崩壊した後、それぞれが人生をどのように生きていくかが、誠実に丁寧に描かれていく。
そしてラストの描写がなんと美しいことか。470頁全てが、この数行のためにあるかのようにさえ思えるほどに胸を打つ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年3月3日
読了日 : 2023年3月3日
本棚登録日 : 2023年3月3日

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