ルポ アフリカに進出する日本の新宗教

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  • 花伝社 (2016年7月15日発売)
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アフリカは物理的にも心理的にも日本から遠い。そんなアフリカで日本の新興宗教を信仰する人たちがいる?というのは驚きだ。

まず思ったのは縁の不思議。いろんな人の人生が交錯し、様々な国を経由して、アフリカと日本が新興宗教を媒介にして繋がっている。日本の新興宗教がアフリカで広まる文化的・社会的背景もおもしろい。キリスト教が既に根付いていたり、現地の伝統宗教がアニミズムに馴染みがあったり、戦争による人口移動や貧困、などなどの要素が、信仰の広がりに影響している。現地の伝統宗教よりも日本の新興宗教のほうが教えが論理的だから魅力的に映る、というも興味深い。オウム真理教の信者が似たようなこと言ってた気がする。

アフリカの人たちの宗教に対するスタンスは、見習うところがあるかもしれない。コロコロ宗教替えるなんて日本では考えにくい。著者も書いているけど、日本人は宗教に対して構えすぎる。即物的なご利益を求めて気軽に信仰していいのかも。日本ではしばしば、宗教を信仰してる人は変わり者扱いされる。それに対して、アフリカでは宗教を信仰することはマジメさの現れ。昔は日本でも真摯に宗教を考えていた人は尊敬の対象だったと思う。

この本では、日本で起きてるような新興宗教の問題は書かれてない。問題がない訳じゃないと思うけど、貧しさという背景は大きいかもしれない。日本の信仰宗教は、アフリカの貧しさ故に信者から金を引っ張ることができない。その結果、宗教としてまっとうに見えてしまう。日本は小金持ちが多いからいろいろ問題が起こるのかも。経済的豊かさと宗教的まともさは反比例するような気がする。

もしかすると今のアフリカに於ける布教は投資なのかもしれない。将来アフリカが大きな経済発展を遂げた時、日本の聖地にお布施として大きな利子が付いて還ってくる可能性もなくはない。中の人がそんなことまで考えてるかどうかわからないが。

ガーナにおける日蓮と創価学会の確執はおもしろい。アフリカにまで対立関係持ち込まなくても、と思うけど傍から見てる分にはおもしろい。創価学会は仏教である。当たり前だけど、そう書いてあって思い出したのが、ジャズ・ピアニストのハービー・ハンコック。彼は仏教を信仰しているのであって、それがたまたま創価学会だった、ということなのかもしれない。新興宗教といっても、土台にあるのは仏教やキリスト教など既存の宗教であることが多いのだから、信仰の本質はそちらにあるはずだ。少なくとも、アフリカの人達からそう見えているのは新鮮だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年2月25日
読了日 : 2019年2月25日
本棚登録日 : 2019年2月22日

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