ルポ ニッポン絶望工場 (講談社+α新書)

著者 :
  • 講談社 (2016年7月21日発売)
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感想 : 37
4

 日本において働いている外国人をめぐる状況について取材し、それをまとめている本。

 これを読むと、日本という国が「人手不足を解消するための移民受け入れ」をいかに正面から実行せずに「脱法出稼ぎ」によってその場しのぎな人材使い捨てをしているのかがよくわかる。

 一般的によく知られてるのは外国人技能実習生だが、著者によれば今もっとも深刻なのは、実は留学生なのだという。それも、大学などではなく、日本語学校で学ぶ(という名目で出稼ぎを行う)ベトナムからの留学生。彼らは、日本のずさんな「留学生30万人計画」を満たすために設けられた、名ばかり日本語学校に在籍しながら、実態としては日本人がやりたがらない過酷な労働環境の仕事を引き受けている出稼ぎ労働者たちである。

 現在の日本の法律上、留学生は週28時間以内という制限のもとでアルバイトに就くことができるが、その時間内でおさまる労働時間の人はむしろ少ない。なぜなら、「留学生」として日本に来るために、現地のブローカーや日本人学校の学費、また寮費などを借金しており、実質的に搾取されているからだ。元々彼らは、「日本に行けば月20〜30万円は稼げる」との触れ込みで日本に来ているが、それは騙されているだけで、実際は語学の学習もろくにできず、また収入もろくに手元に残らない。そもそも労働環境自体が違法に近い状態なので、法的にも守られにくい。

 だから借金で身動きが取れず打ちのめされた留学生たちは次々と失踪し、より実りのある「不法就労」についたり、あるいはやむなく犯罪行為に走るのだ、と解説されている。

 外国人の使い捨てとして書かれているのは、ほかにも技能実習生(最近は中国人も愛想を尽かしており、ベトナム人が多数)、新聞奨学生(ベトナム人多数)、フィリピン・インドネシアから来た看護師・介護士、日系ブラジル人(こちらは永住権が与えられたが、実質的な受け入れ体制はなかった)、日系フィリピン人等々。

 日本人であっても相当暮らしづらいのが日本の現状ではあるが、こんな強制労働国家に来る外国人も不憫である。少し前に、「難民受け入れをどうするか」ということに関して、リベラル系の人が(排外主義的な声を抑える意味も込めて)「歓迎する!」とアピールをしていたが、外国人の「不法」滞在について以前から取り組んでいる一部の左翼グループは、むしろ「日本には来ないほうが良い」という主張をしていたように聞いている。

 確かに、この本にあるように、ろくな受け入れ環境を設けずに外国人を排除する仕組みばかりが温存している現実があるのであれば、「こんなところ来てもひどい目にあうだけだよ(来ないほうが良い)」という主張には理があると言える。

 この本でまとめられているような内容は、端的に言って国家ぐるみの外国人差別なわけだが、アホなネトウヨなどは、むしろこの外国人たちを問題の根源であるかのようにすり替えて排除しようとするのだろうと考えると、ほとんど地獄だし、暗澹たる気分になる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 貧困・労働
感想投稿日 : 2016年11月15日
読了日 : 2016年11月5日
本棚登録日 : 2016年11月15日

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