国内でもほとんど発症例のない難病を患ってしまった女子大学院生によるノンフィクション作品。
著者は学部時代から、ビルマの難民支援の活動を精力的に行っていたのだが、ある時から体の不調を感じるようになり、複数の病院を盥回しにされた後に、難病であることが判明。病気になるまで・検査・入院・などについて書いているが、単なる闘病記というよりも、病気と共に生きる人間の「生活の記録」。
話題になっているだけあって、文章は極めて読みやすい。時に過剰なまでのwユーモアが盛り込まれ、同時に知的なウィットにも富んでいる。「難病女子」としての生活を通して、この社会に潜んでいる構造的な問題(たとえば難病患者や障害者が生活する上での制度的不備など)についても考えている。
さらっと読むこともできるし、深く掘り下げて考えることもできる、という意味で深い本だと思う。もちろん、大人が読んでもいいんだけど、高校生や大学入学間もない人とかに読んでもらいたいような気がする。
ただ懸念があるとすれば、この本が「難病にくじけずに闘ってる人の話」という形で「お説教の道具」にされる可能性。すなわち、「こんなに大変な人がいるんだから、自分(お前)は我慢しなきゃ」といった、感情抑圧のために用いられたらやだなぁと。つまり「犠牲の累進性」の話。
たとえば、僕が体がだるくて「毎日つらいっす」って誰かに言っても、「そんなの、もっと苦労してる人に比べたら大したことないでしょ」って言われるような可能性もありうるわけで、別に大野さんの本がそうしたことを助長するように書かれてるとは全然思わないけど、そういう風に捉える人はいそう。
- 感想投稿日 : 2011年9月4日
- 読了日 : 2011年8月28日
- 本棚登録日 : 2011年9月4日
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