エリカ 奇跡のいのち

  • 講談社 (2004年7月14日発売)
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本棚登録 : 309
感想 : 58
5

2004年発表。


2005年第10回
日本絵本賞・翻訳絵本賞受賞作。


お母さまは、
自分は『死』に向かいながら、
わたしを『生』に向かって投げたのです



第二次世界対戦中のドイツで
奇跡的に生き延びた
ひとりの女性エリカを描いた
実話に基づく絵本です。



とにかく写真と見間違うほどの
緻密でリアリティある絵に圧倒されました。

モノトーンで統一された絵に
ユダヤ人を表すバッジの黄色と
エリカがくるまれた毛布のピンク色だけに
色がつけられています。


ユダヤ人強制収容所行きの列車に乗り込む人々を描いた絵。
このまま列車に残っていては
確実に殺されてしまう。

藁をもすがる思いで
自らの赤ん坊を
収容所へ向かう走る列車から
投げ出す母親。

愛する我が子を、走る列車から投げなければならなかった、
母親の気持ちを考えると
胸が締め付けられ、
涙が止まらなくなります。



エリカはその後
奇跡的に生き延び
皮肉にも自分を殺そうとした
同じドイツ人の手によって育てられます。


誕生日も知らない娘に
つけた
エリカという名前。

自分自身が危険な目に合うのもかえりみず
エリカを育てたドイツ人の勇気にも
心を打たれました。



訳者の柳田邦男さんは言います。

例え生きられる確率は
1万分の1であっても
ゼロではない道を我が子のために選んだ母親の決意には
一筋の『生』の光を求める崇高なものとして、
人々の心を揺さぶらずにはおかないだろうと。



600万人もの
なんの罪もない人たちが、
ただユダヤ人だということだけで殺されていった事実。

この母親と同じように沢山の人たちが
生きたいと願い、
生かしたかったであろう命。


決して忘れてはならないし
悲惨な現実を
二度と繰り返さないためにも、

今の殺伐とした世の中で
命の意味を考える意味でも、

この絵本を読むことで
子供にも大人にも
語り継いでいかなきゃって思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2011年1月29日
読了日 : 2011年月
本棚登録日 : 2011年1月29日

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