ぶらんこ乗り (新潮文庫)

  • 新潮社 (2004年7月28日発売)
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5

声は出せないけど
ぶらんこが上手で
動物と話ができて
つくりばなしが得意な
一人の男の子と、

そしてその子の
つくりばなしに救われた
姉の物語。



金城一紀の「映画篇」や
ティム・バートン監督の「ビッグ・フィッシュ」
に触れた時に感じた
「物語の力」を
これでもかと思い知らされた小説です。



姉が喜ぶ顔が見たいがために
ノートに書き綴った
4歳の弟が考えたおはなしの数々。

哲学的で考えさせられる話ばかりだけど、
自分の胸には
痛いほど響いてきました。




命がけで手を繋ぐことで絆が深まる
ぶらんこ乗りの夫婦を描いた
「手をにぎろう!」


そして声を失った弟の
切実な思いが込められた
歌を捨てた郵便配達員の話
「うたうゆうびんはいたつ」
には
まんまと泣かされましたよ…(>_<)


やがて弟は初めてのサーカスでぶらんこに魅せられ、
この世のいろんなものと
しっかり手を繋ぐために、
誰よりも上手い
ぶらんこ乗りになっていく。



犬の伝言板として再生した
「指の音」という変な名前の犬と
声を無くした弟との
向かい合う空中ぶらんこのような絆がまた
なんともあったまるこな気分をくれるし、

指の音の腹に書かれた
最後の伝言はもう
反則でしょ〜(泣)



なぜ人は物語を必要とするのか?


物語とは
想像力の翼で空を翔る
魔法の絨毯のようなもので、

人間はその「物語」によって
他者の苦しみや痛みを自分のものとして味わい、
人を憂う心を身に付けていく。


人間と他の獣を隔てるものは
物語を必要とするかしないか、
その一点に尽きるんだと思う。



ラスト「冬の動物園」で鮮やかに見せてくれる
希望の錬金術には
誰もが泣き笑いになること必至。
(いしいしんじやるじゃんって思った瞬間でした)


シュールでへんてこだけど、
いつまでも記憶に残る
愛しい小説です。


あなたに重なる物語も
必ずここにありますよ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2013年4月8日
読了日 : 2013年4月8日
本棚登録日 : 2013年4月8日

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