『好き』のスタートはいつだって物真似から始まる。
僕も学生時代、いくつのスターたちに憧れ、なりきってきただろう(笑)
お腹に当てた両手の平を見て
『なんじゃ、こりゃぁぁぁーっ!』の松田優作。
『寝たふりぃ~してる間にぃ~出ていってくれぇぇ~♪』で
シルクハットを華麗に客席に投げた
スーパースター、沢田研二(ジュリー)。
くわえタバコで肩をすくめながら
ルーズにギターを弾く
ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズ。
ボギーに憧れ親指で唇を撫でる仕草が決まってた
映画『勝手にしやがれ』のジャン=ポール・ベルモンド。
『怒るで、しかしぃ』『メガネ…メガネ』の口癖が
クラスで大流行した
浪花の天才漫才師・横山やすし。
単身アメリカに渡り、お尻をぷりっと打者に向けるトルネード投法で
メジャーリーグ相手に三振の山を築いた野茂英雄。
『スコーン、スコーン、コイケヤスコーン♪』
『スコーン、スコーン、コイケヤスコーン♪』
『カリッと サクッと おいしいスコーン♪』その強烈なインパクトと怒濤の勢いに
誰もがワケも分からず口ずさんでしまった(笑)
いまや伝説の湖池屋『スコーン』のCM。
などなど。
(最後はシャレです笑)
そして…
そんな『好き』から始まる行為は
ときにオリジナルを凌駕することもあるのである…。
ということで、この本。
誰もが知っている文豪や著名人、ミュージシャン、Instagram風、雑誌風、迷惑メール風など、100通りの文体で
カップ焼きそばの作り方が書かれている。
(てか、ほんまにカップ焼きそばの作り方しか書いてない笑)
昔から、『好きこそものの上手なれ』とはいうけれど、
そんな好きからくる物真似がここまで完コピだと、
もはや笑うしかないし(笑)、
これはもう、紛うことなき『愛』なのだ。
好きな作家や馴染みのある作家なら
確実に笑えるし、
知らない作家であっても、
(たとえ下らない内容であっても笑)
文体から興味が湧いて
なぜかその人の作品を読んでみたくなるから、
あ~ら不思議(笑)
個人的にツボだったのは、
初期のニヒルな村上春樹になりきった
『1973年のカップ焼きそば』、
めんどくさいことをまた言ってる(笑)
星野源的ニュアンスが笑える
『焼きそば恥だがカップ立つ』、
ウキウキ通りをペヤング通りに変えた歌詞のセンスに唸った(笑)
小沢建二の大ヒット曲のパロディ
『痛快ウキウキ焼きそば通り』、
80年代に青春を送ったチェリーボーイたちなら
誰もが一度は読んだであろう(笑)
雑誌『POPEYE』の文体を真似た
『カップ焼きそばは、日本発の世界的大発明なのだ!』、
読んでてなぜかドキドキした自分が恥ずかしい(笑)
官能小説家・宇能鴻一郎のパロディ
『食欲の悦び』、
アララギ君の一人語りが脳内で繰り広げられる(声は勿論、神谷浩史!)
西尾維新の『食物語』、
学生時代、男の子ならお世話になった、
あの「週間プレイボーイ」がよみがえる!(笑)
『カップ焼きそばクン(18)』、
懐かしい文体に不覚にもちょっと泣きそうになった (汗)
中島らもの
『カップ焼きそばよりもトリスください』、
かな~。
それにしても、下らない(笑)
しかし、ここまで様々な作家の文体や
創作者の醸し出す雰囲気を模倣できるということは
すべての作品を読みこみ、
文学や本という表現が好きじゃなきゃ到底できないこと。
(その労力たるや!)
それに僕は、下らないことに全力を懸ける大人がけっこう好きだ。
くだらないことに
一所懸命になれる心が好きだ。
カッコ悪いということは、実はカッコいいのである。
やっぱ、
『愛なんだよ、愛!』
- 感想投稿日 : 2018年1月20日
- 読了日 : 2018年1月20日
- 本棚登録日 : 2018年1月20日
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