もし文豪たちが カップ焼きそばの作り方を書いたら

  • 宝島社 (2017年6月7日発売)
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本棚登録 : 2467
感想 : 270
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『好き』のスタートはいつだって物真似から始まる。
僕も学生時代、いくつのスターたちに憧れ、なりきってきただろう(笑)


お腹に当てた両手の平を見て
『なんじゃ、こりゃぁぁぁーっ!』の松田優作。

『寝たふりぃ~してる間にぃ~出ていってくれぇぇ~♪』で
シルクハットを華麗に客席に投げた
スーパースター、沢田研二(ジュリー)。

くわえタバコで肩をすくめながら
ルーズにギターを弾く
ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズ。

ボギーに憧れ親指で唇を撫でる仕草が決まってた
映画『勝手にしやがれ』のジャン=ポール・ベルモンド。

『怒るで、しかしぃ』『メガネ…メガネ』の口癖が
クラスで大流行した
浪花の天才漫才師・横山やすし。

単身アメリカに渡り、お尻をぷりっと打者に向けるトルネード投法で
メジャーリーグ相手に三振の山を築いた野茂英雄。

『スコーン、スコーン、コイケヤスコーン♪』
『スコーン、スコーン、コイケヤスコーン♪』
『カリッと サクッと おいしいスコーン♪』その強烈なインパクトと怒濤の勢いに
誰もがワケも分からず口ずさんでしまった(笑)
いまや伝説の湖池屋『スコーン』のCM。


などなど。
(最後はシャレです笑)




そして…


そんな『好き』から始まる行為は
ときにオリジナルを凌駕することもあるのである…。




ということで、この本。
誰もが知っている文豪や著名人、ミュージシャン、Instagram風、雑誌風、迷惑メール風など、100通りの文体で
カップ焼きそばの作り方が書かれている。
(てか、ほんまにカップ焼きそばの作り方しか書いてない笑)


昔から、『好きこそものの上手なれ』とはいうけれど、
そんな好きからくる物真似がここまで完コピだと、
もはや笑うしかないし(笑)、
これはもう、紛うことなき『愛』なのだ。


好きな作家や馴染みのある作家なら
確実に笑えるし、
知らない作家であっても、
(たとえ下らない内容であっても笑)
文体から興味が湧いて
なぜかその人の作品を読んでみたくなるから、
あ~ら不思議(笑)


個人的にツボだったのは、
初期のニヒルな村上春樹になりきった
『1973年のカップ焼きそば』、

めんどくさいことをまた言ってる(笑)
星野源的ニュアンスが笑える
『焼きそば恥だがカップ立つ』、

ウキウキ通りをペヤング通りに変えた歌詞のセンスに唸った(笑)
小沢建二の大ヒット曲のパロディ
『痛快ウキウキ焼きそば通り』、

80年代に青春を送ったチェリーボーイたちなら
誰もが一度は読んだであろう(笑)
雑誌『POPEYE』の文体を真似た
『カップ焼きそばは、日本発の世界的大発明なのだ!』、

読んでてなぜかドキドキした自分が恥ずかしい(笑)
官能小説家・宇能鴻一郎のパロディ
『食欲の悦び』、

アララギ君の一人語りが脳内で繰り広げられる(声は勿論、神谷浩史!)
西尾維新の『食物語』、

学生時代、男の子ならお世話になった、
あの「週間プレイボーイ」がよみがえる!(笑)
『カップ焼きそばクン(18)』、

懐かしい文体に不覚にもちょっと泣きそうになった (汗)
中島らもの
『カップ焼きそばよりもトリスください』、

かな~。



それにしても、下らない(笑)

しかし、ここまで様々な作家の文体や
創作者の醸し出す雰囲気を模倣できるということは
すべての作品を読みこみ、
文学や本という表現が好きじゃなきゃ到底できないこと。
(その労力たるや!)


それに僕は、下らないことに全力を懸ける大人がけっこう好きだ。
くだらないことに
一所懸命になれる心が好きだ。


カッコ悪いということは、実はカッコいいのである。

やっぱ、
『愛なんだよ、愛!』

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: その他
感想投稿日 : 2018年1月20日
読了日 : 2018年1月20日
本棚登録日 : 2018年1月20日

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コメント 2件

夜型さんのコメント
2018/01/23

円軌道の外さん、こんばんは。初めまして。
先程はいいね!だけでなく親切にコメントまでありがとう御座いました。
こちらもご挨拶したく、お邪魔させていただきます。

ブクログでは、読ませるレビューが多く、また人と出会い、さらに新しい本とも出会える場でもあり、すごく気に入っています。
それにみなさんいろいろな語り方をされていますよね。
円軌道の外さんのレビューも面白く読ませて頂いています。なので、いいね!しました。
本というのは、人の性格やバックボーンすら見せてしまうかもしれません。
小生からすると周りは個性豊かな人たちばかり。
円軌道の外さんも個性的に見受けられました。

この作品もとても面白そうに思います。
松岡正剛氏の千夜千冊で取り上げられていましたが、まるでレーモン・クノーの文体練習の実践編のようです。
文体によって人が出てくるのをこの本は教えてくれそうですよね。

まったりレビューしたためてゆくつもりです。
豆腐メンタルなのでたまにネガティブになったりポジティブになったりですが、いろいろに書き方ができるのではと僭越ながら実験的な試みもしてゆきたいと思っています。

よろしくお願いいたします。
それでわんこ!

円軌道の外さんのコメント
2018/01/28

読書猫さん、コメントありがとうございます!

今週は東京は久びさに大雪が降ってうちの町でも
25センチほど積りました。
僕は昼間は便利屋の仕事をやっているのですが、
今週は雪かきの依頼や夜逃げの引っ越し仕事や遺体の出た部屋の掃除など、かなりバタバタと忙しくしておりました。

たくさんのポチを頂きながら、
お礼が遅くなりホンマすいませんでした!


読書猫さんの仰有る通りだと思います。
僕も『文体こそが人なり』と常々思っています!
過ごしてきた環境や今までの経験や人との触れあいの記憶が、
その人を作るし、
書く人それぞれの文体を作るのではないでしょうか。

ブクログは本当にいろんな人と交流ができるし、単純に楽しいですよね(笑)
なんと言っても自分の『好き』がカブる人たちばかりなので、
お互い共感もしやすいし、
やっぱ好きを語る人たちの文章を読むのは、嬉しくなります。
それに僕は『我以外みな師なり』と思っているので、人が書いたレビューを読んだり、考えかたを聞いたりするのは
すごく勉強になるんです。

あはは(笑)、いやぁ~、僕って個性的ですか?
自分では分からないし、そう見えてるならとても嬉しく思います(笑)
レビューなんて、人と違ってナンボだし、
逸脱しなきゃ、個性とは呼べないと思って生きてきたので、
表現者としては、迎合するのではなく、
常に『逸脱すること』を意識しながら今も文章を書いてます。

読書猫さんの文体も充分に個性的だし、
僕は好きですよ。
正直だし、血が通ってる文章だと思うし。
何より、レビューを見ただけで、
コレは読書猫さんが書いたものだって分かりますよね。

あはは(笑)、僕もすぐにレビュー書けなくなるし、
大丈夫ですよ。
落ち込んでいたとしても、自分に正直に書いた文章の方が
実は読む方も共感できるのです。
逆に読む人を意識し過ぎて
体裁を整えた文章は、心の深いところにはまったく響かないですし。

実験的な試みにも期待してます!(笑)

ではでは、これからもよろしくお願いします!

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