『待ってろドラゴン、ステーキにしてやる!』
一千年前に滅びた黄金の国の王が
ある日小さな村の地下墓地の底から現れた。
かつて栄華を誇ったその国は狂乱の魔術師によって、
地下深く今なお囚われ続けているという。
「魔術師を倒した者には我が国のすべてを与えよう」
そう言い残して男は塵となって消えた。
その言葉に惹かれ、黄金城を手に入れるため、
地下ダンジョンに入る勇気ある冒険者たち。
そんな中、主人公のライオス一行は、 ダンジョン深層で伝説のレッドドラゴンに挑むも、
空腹からチームプレイに乱れが生じ、ライオスをかばった妹のファリンがレッドドラゴンに丸呑みされてしまう。
金銭に食料、そして何人かの仲間を失ったライオス一行は
果たして妹のファリンが消化されるまでに
無事彼女を救出できるのか?
そう、冒険すればお腹が減る。
ダンジョンをさまよう勇者たちとてそれは同じ。
寂しい懐具合から
迷宮内で魔物(モンスター)を倒し自給自足することにした主人公たちの
腹ぺこダンジョンファンタジーのはじまりはじまり~(笑)
九井諒子、初の長編ということで漫画も一時どこの書店でも手には入らないくらいバカ売れして話題になってますが、
なんといっても発想がワザありですよね(笑)
アドベンチャーとグルメを掛け合わせたのも面白いし、
冒険をするために魔物を倒すのではなく、
食べるために魔物を倒していくのがなんとも斬新なのです。
(戦う前から「この魔物はどんな味がするんだろう」とか
倒したらもれなく料理方法を考えたり、食べることありきでストーリーが進んでいきます笑)
そして一度でもRPGのアドベンチャーゲームをしたことのある人であればニヤリとできるお決まり世界観や
RPGのあるあるエピソードが満載なのも読者がハマる魅力なのかも。
(一体一体、詳細に描かれた魔物たちの生態設定も、有り得ない物語に説得力やリアリティを生む効果をもたらしてます)
実は前々から魔物を食してみたかった(笑)、
ど天然な主人公の青年ライオス。
金属の鎧に身を包んだ普通の人間。
迷宮内でライオスを守るため
真っ赤な鱗のドラゴンに食べられたライオスの妹のファリン。
攻撃から蘇生、解呪など様々な魔法を使える
妖精エルフ族の少女、マルシル。
パーティーの中で最も常識的な性格で、木製の杖と編み込んだ金髪のロングヘアーがトレードマーク。
扉や罠を解除する鍵師の青年チルチャック。
背が低く幼い少年のような外見だが実は29歳で、性格は穏やか。
迷宮内で10年以上魔物料理の研究をしている
ドワーフ族の髭もじゃおじさんのセンシ。
夢はレッドドラゴンを調理すること!(笑)
みんなそれぞれ一癖も二癖もあるキャラなんだけど、
中でもヒゲもじゃ顔でバイキングのような鎧を頭にかぶったセンシのキャラが面白い!
魔法生物ゴーレムを勝手に畑代わりに使っていたり、
ダンジョン各所にあるトイレの糞尿を回収して肥料に使ってたり、食べるためにはやりたい放題(笑)
魔法を嫌い、性格もKYだけど
サバイバル能力に優れていて食べること以外は無頓着なので、
世間知らずな学者という感じで
なぜか憎めないのです。
(チビでずんぐりむっくりな容姿も可愛い)
そしてなるべくなら見た目にグロいものは食べたくないと願う
エルフ族の少女、マルシルの
「お腹は減っているけど魔物料理はイヤ~」という
乙女心の葛藤が笑えます(笑)
人間に吸い付き窒息死させるスライムを干したものと
歩き茸と大サソリを入れた
サソリ鍋の水炊き。
ビタミンたっぷりの人喰い植物のタルト。
胴はニワトリ、尾はヘビのバジリスクの腹に香草を詰め込んでじっくり焼いた
ローストバジリスク。
見た目にも美味な
マンドレイク(根っこが人型の植物)とバジリスクのベーコンを使ったオムレツ。
ダンジョン内の罠を利用して作った(笑)
マンドレイクのかき揚げと大蝙(おおこうもり)の天ぷら。
背中を耕した畑でとれたキャベツや人参、ジャガイモ、玉ねぎ、かぶなどの野菜をふんだんに使った
ゴーレム畑の新鮮野菜ランチ。
など、一応グルメ漫画だけに(笑)
スライムにドラゴン、歩くキノコ、亜人や巨大植物、鎧のお化けなど、
食べてみなければ食べれるかどうかさえ分からない(笑)
気味の悪いグロテスクな魔物たちを
ライオスたちがどう料理していくのかが最大の見どころです。
(ちゃ~んとレシピも付いてます笑)
他にも、センシがゴーレムという泥と土と石で人間を模した魔法生物を倒して
背中を畑代わりに使ってるのは笑ったし、
動く鎧とライオスの手に汗握る対決や
ライオスが絵の中にワザと取り込まれて
描かれた食べ物を食べてくる話はかなり面白かった。
仲の悪かったセンシとマルシルが少しだけ心通わせた水棲馬のエピソードや
地上を追われ地下で生活するしかなかったオークの家族との触れ合いのエピソードもいい話で
異人種との共生など
意外とこの漫画、いろんなことを考えさせてくれます。
グルメ漫画の側面は勿論ですが、
ギャグ漫画としてもファンタジーとしても良くできているのは、
デビューから様々なジャンルのショートショートを手がけてきた天才・九井諒子だからこそ。
只今2巻が出たところなので
まだ間に合います!(笑)
ちょっと変わった世界観の漫画が好きな人、
ゲーム好き、ドラクエ好き、RPG好き、ゲテモノ料理好き(笑)、
カルトドラマ『“勇者ヨシヒコ”シリーズ』にハマった人に
特にオススメします(笑)
- 感想投稿日 : 2015年9月22日
- 読了日 : 2015年9月22日
- 本棚登録日 : 2015年9月22日
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