窮鼠はチーズの夢を見る (フラワーコミックスα)

著者 :
  • 小学館 (2009年5月8日発売)
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本棚登録 : 2713
感想 : 220
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BLコミックスでこれほど胸が抉られるような衝撃を受けたのは初めて。
だいたい、BLには耽美とかロマンを求めがちで、痛いものは回避したいほうです。あの萩尾望都センセですらダークで深いがロマンはあったのに…でも、この作品は感情がものすごく生々しく描かれていて、正直自分の一番弱い部分を暴かれてるくらいリアルに引き込まれました。

今ヶ瀬が熱愛する恭一は、何がよくてそんなに執着するのか、と思うほど生き方も恋愛もジコチューで受身で流され侍な男。
来る者拒まずタイプの楽な生き方してるから、恋愛遍歴も豊富そう。常識的な考えのみで男はダメと決め込んで、相手の気持ちなんかかえりみないし。
今ヶ瀬も、ただ執着するだけじゃなく、相手を調べ上げつけ込んでモノにしようとしてるわけだから、ほめられたものではない男。でも、時々見せる臆病さとか弱さとかに恭一だけでなく、こっちもくらっとさせられます。悪人になりたがらない恭一の性格を見抜いて、陥落させる努力と根気はある意味すごい。
恭一は、楽に生きたいとかゲイは別世界とか考えていて、女とくっついたり離れたりしてるあたりBLでは珍しいけど、ノーマルならほんとに普通、世間一般。
その彼が、情が移ったのかほだされたのか、ゲイの今ヶ瀬に自ら飛び込んでいくシーンは、経緯が経緯だけに萌えた。男同士の壁を乗り越えた恭一、へタレだったのに偉い。Hシーンのひとコマひとコマが萌えます。上手すぎる。

あと、出てくる女子が恐すぎるくらい等身大。すごく可愛い見掛けに、ナイフのような鋭い台詞!レディコミ仕込みなんでしょうか?女の怖い部分まるごと実感できました…

今ヶ瀬にしろ恭一にしろ、どこがよくてそんな相手に?と問いかけたいところけど、それ以上にまず、それこそが「恋愛」なのだということを認識させられる作品です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 水城せとな
感想投稿日 : 2011年2月17日
読了日 : 2010年11月6日
本棚登録日 : 2009年7月1日

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