影裏 第157回芥川賞受賞

著者 :
  • 文藝春秋 (2017年7月28日発売)
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本棚登録 : 1121
感想 : 182
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不思議なくらい、なかなか読後頭から離れることがなかったストーリーでした。
表現がやや難解で、今野と日浅の関係性が直截的に語られず随所に散りばめられた比喩表現のみだったところが、なんだか高尚な文学の雰囲気を醸し出していて、普通に読みたかった読者をとてつもなく困惑させてしまう原因になっている気がしました。
匂わせがわかる人だけにわかる仕掛けが、評価の分かれどころかも。

普通にわかりやすく書いたら、今野は陰キャで日浅はだらしなくて不実なオトコ的な話。それをここまで昇華させて美しい文章で仕上げていてすごいです。
今野の日浅への想いや印象が、美しかったり雄々しかったり時には残酷だったりする盛岡の自然描写で表現されているところが一番良かったです。
今野は一途に日浅に憧れていいところばかり見ていたけれど、美しい風景にも災害があるように、日浅にも裏の顔があったという残酷さを容赦なく突きつけられて、お気の毒としか言いようがなかったです…
アバエクの極みだったのでは。
日浅のことを理解しようと努力していた今野ですが、やはりいいところしか見てなかった、自分の都合のいい理想像でしかなかった、というのが痛いところで、わりと恋愛ではありがちな心理だったのが共感ポイントでした。面白かったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノベル
感想投稿日 : 2021年2月15日
読了日 : 2021年2月15日
本棚登録日 : 2021年2月15日

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