影裏 第157回芥川賞受賞

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著者 : 沼田真佑
  • 文藝春秋 (2017年7月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907284

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影裏 第157回芥川賞受賞の感想・レビュー・書評

  • 『電光影裏斬春風』…。良くも悪くも東北を描いていて共感する場面が多かった。東北って環境が厳しいせいか、自然と一体的な考えがあって、人情深くて温かい一面と、一度こじれるともう二度とは戻れない非情なところもあり、日浅の父なんかは「こじれた非情」が丸出しで、血を分けたわが子とはいえ突き放し方が容赦ないという…。わかるわ、その感じって思った。

    どこの一族に一人はこういう(日浅っぽい)のが存在しているんじゃないかな。「はんかくせぇ。あいつはダメなヤツ」というレッテル貼られて一度貼られると死んでも剥がされないラベルみたいな感じ。考え方も保守的だし。けっこう情け容赦ない酷な面があります。内容はわかりにくいところもあるけど面白かった。言ってしまうと悪いけど余所者だからこそ描けた東北感だと思う。(←ほめてます) 気のせいかもしれないけどさりげなく思わせぶりで官能的だったような…。

  • 雑誌(『文學界』2017年5月号)で読んだ。
    久しぶりに難解な作品が来たか、という印象を受けたが、それはある種の文体から受けた印象で、作品の内容自体は実際読み終えてみると(これは文學界新人賞選考委員の松浦理英子氏も言っていたが)例えば何か謎が残るとか、わざと矛盾点があるとかそういったことはない非常なシンプルな構成になっている。ただやはり、筆力のある文体と言って良いのだろうが、ある種「凝りすぎている」印象が強かった。最近の若手で同様に筆力のある作家の高橋弘希氏などと比べると、力が入りすぎている感じがした。他の人はどうなのかわからないし、最近小説自体読むのが苦痛な状態にある自分の問題でもあるのだろうが、文芸誌で30p、単行本で100p弱の作品だが、読むのに非常に疲れた。
    ラストに関しては、うまいところに収めたと思う。
    また、震災が絡む、セクシャルマイノリティが絡む、という作品ということだけ聞いていたので、どんなどぎついのが来るのかと思っていたが、そこを収めた筆致はやはり評価されれるべきだろう。
    ただ、津波のシーンや震災直後のシーンの描写などは読むのが結構辛かった。
    しかし、芥川賞か…。いや、不満はさほどないんだけど、だったら高橋弘希にもやってくれよ、と思ってしまうのであった。

  • 自然描写の評判を聞いて読んでみました。
    うっそりとした、緑も影も濃い森。
    その中を流れる清流の白いきらめき。
    著者が描く東北の自然は確かに美しかったのですが、それ以上に気がかりを残す幕切れの印象が強かったです。

    東日本大震災で行方知れずになった友人の手がかりを求め、実家を訪ねた主人公に、友人の父親は「息子とは縁を切った、あれを捜すなど無益だ」と告げます。
    なぜそこまで…と戸惑っているところに、「息子なら死んではいませんよ」という父親の真意の読めない一言が加わり、もやもやとしたものがのどの奥にあるような感覚のまま読了。

    登場人物たちの乗っている車の種類、煙草やお酒の銘柄などは具体的な名前で描かれている一方で、ほのめかされたことがほのめかされたまま淡々と進んでいくぼんやりとした部分もあり。
    そのギャップがもやもや感をさらに膨らませているのかも…と、あとから考えてみたりもしたのでした。

  • 芥川賞。フシギ人物の話。その友人も当人も。
    で、日常ホラーのカテゴリーに入れてしまったが。
    芥川賞選者の奥泉氏の選評の「これから日浅という謎の男を追う主人公の物語が始まるのではないか」という展開だとおもしろい。日浅という男の今後を見てみたい。もちろん生きてるんだろうなと確信。

  • とても面白い。オススメ✌️

  • 2017年直木賞。うーん。

    話題作なので、読んでみたけど。
    読み終わってそれで???と思ってしまった。
    合わなかったなぁ。

    本も薄いのですぐに読める。

  •  第157回芥川賞受賞作品「影裏」をよみました。
     岩手の自然な情景を釣りなどの描写とともに描いており非常に技巧派の作家であると感じ、とても面白く読みました。また、東日本大震災の出来事が物語のターニングポイントとして描かれています。
     この作品では主人公が途中、ゲイであることが示されていたり、LGBTに触れられていたりするなど、幾つかの話題が込められています。また、物語の終盤では中心的な人物である日浅の秘密があらわになります。日浅の生死が不明であり途中での断絶を感じさせる物語です。これが作品中の大きなテーマを示すものなのか私にはわかりませんでしたが、物語の最終的な帰結を読みたい作品であると感じました。

  • 芥川賞というので、読んでみた。
    ストーリーとか結末とかはよくわからない、、、
    でもひとつひとつの景色や人物の描写が深く鮮やか。
    学歴詐称の日浅という男、主人公も周囲も詐欺被害にあっていたのか⁉︎それに対する感情⁉︎同性愛者による恋愛感情抜きの男の友情⁉︎全くわからないが、あえてボカしているのが絶妙なのか⁈
    よくわからんが、何となく流石芥川賞のような気がする。

  • 第157回芥川賞受賞作。図書館で予約していたら回ってきたので、一気読み。
    3.11とLGBTを背景に、人付き合いのできない若者の苦悩がテーマって感じかな。
    保毛尾田保毛男が話題となり、復興マラソンを走ってきた後の今読むと、いろいろ思うことはあった。
    何でこれが芥川賞っていう書き込みもよく見られたけど、芥川賞ってこんなのだよね。

  • 大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。
    北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、「あの日」以後、触れることになるのだが……。
    樹々と川の彩りの中に、崩壊の予兆と人知れぬ思いを繊細に描き出す。
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    うーん意味がわからなかった(爆)芥川賞らしい100ページ以下の小説に、多くを詰め込みすぎたというか、きれいに書きすぎてるというか。それが芥川賞?

  • 読んでいて、続きを予測しやすいのが“読みやすい文章”だとするならば、本書の文章は読みにくい。
    主人公が目的地に向かう描写の途中に、平気で関係ない話が飛び込んできたりするので「あれ、いま〇〇に向かう話じゃなかったっけ」ってなる(主人公の心理描写をありのままに描いているのだろう。おそらく)。

    読者が読み終えた後、「この物語のテーマは△△だったんだな」と思える本が”良い本“だとするならば、本書はそれには該当しない。

    ただ、「芥川賞受賞作!」とか帯の大仰なあらすじを知らずに読めば、また印象は違ってたんじゃないかなと思う。そんな本でした。

  • 言葉を知ってる作者だなと思いました。人の孤独を垣間見ました。東日本大震災の前と後の話し。

  • 主人公・今野は会社の出向で東京から岩手に移り住んだ会社員。土地勘もなく友人もいない彼にとって唯一心を許せるのは同じ会社の日浅。共に酒好きで、釣りが好き。やがて頻繁に遊ぶようになる。しかし、日浅は突然退職し音信不通に。深い喪失感に苛まれる今野。そして数ヶ月後、突然に姿を現した日浅。彼は新しい仕事に就いており、かつてのような交流ができると期待するも、中々以前のような関係には戻れない掻痒感を覚える最中、あの3月11日を迎える。今野は津波に流されてしまったのか。必死で探し続ける今野。彼の実家へと足を延ばし父親に会う。父親は実の息子の「裏の顔」をぽつりぽつりと語りはじめる…。

    主人公今野は同性愛者であり、舞台設定が震災前後の東北であるなど、「LGBT(性的マイノリティ)」「震災」の2つの要素を含んだ「恋愛小説」として僕は読んだ。行方不明になった実の息子の捜索願を出さない父親。主人公今野だけが彼を思い、ずっと捜索を続ける。主人公の感情は誰とも共有できず、宙ぶらりんのまま。

    人物造形をあえてはっきりと描写せず、日記文学的に淡々と綴られていく構成。風景描写や釣り場の情景などは一幅の絵画のような美しい筆致で描かれている。読者の想像に委ねる手法を用いているため、初読ではピンとこず、再読してようやく話の大要がつかめた。100頁足らずの短編小説でありながら、小骨の多い焼き魚を食べてるかのような難儀な小説でありました。これが純文学であり、芥川賞なんでしょうな。

  • 短くて早く読み終えた。一言で言うと日浅がどうしようもない男だったと言うことか。釣りの情景とかは上手いのかもしれないが、使っている言葉が難しく、自分は釣りもしないので軽く読み飛ばしてしまった。

  • はい、いちおう読みました。
    芥川賞ですからね。

  • 今年の芥川賞受賞作品。ページ数は少ないが、言葉の言い回し、漢字の表現、読解の難読さは芥川賞らしさを感じる。全体的に、静かに淡々と物語が進んでいく印象に、舞台となった岩手の描写と登場人物各々の人間模様が決して悪目立ちはせず、濃くもなく、影に隠れてしまうような存在感の薄さでもないような感じに見受けられた。感情の起伏もあるが、激しさが目立つほどでもなく、静かで平行線だと感じる筆致なのかなと思った。登場人物の人間模様と時の流れが結末がどう動くのか重要な鍵だったという印象。

  • 岩手に転勤でやってきた“わたし”は、同僚の日浅と友人になります。“わたし”は、崩壊に陶酔しがちな日浅と、岩手の豊かな自然のなかで、釣りを楽しんだり、酒を飲んだりしました。

    震災後、日浅とは連絡が取れなくなってしまいます。それでも、“息子なら死んではいませんよ。(p85)”と言う、日浅の父親の言葉が印象的でした。日浅のもう一つの顔を知ることになっても、嫌いになるどころか、より好きになってしまいました。

    作品を通して、岩手の美しい川や樹々とともに、寂しさを感じました。

  • 請求記号:913.6/Num
    資料ID:50088047
    配架場所:図書館1階東館 め・く~る

  • 『影裏』を読みました。
    普段は文学賞の受賞作ということで手に取ることはあまりないけれど、
    帯のコメントがとても素敵だったので、つい…。

    北緯39度。
    岩手県という土地には、
    一度旅行に行ったことがあって、
    空が高く曇が低い、じっくりと地面に根がはるような素敵な場所でした。

    作中冒頭に出てくる岩手県の表現が抜群に素敵で、

    岩手というところは、
    (中略)
    いたるところに生き物の気配がひしめいている。

    これがすとんと心におりるかどうかで、
    物語の質感がだいぶ変わってくるかもしれない。
    ある土地を的確に表現する文章はとても希なもの。この一文に出会えただけでも読んでよかったと思います。(言い訳ではない)

    誰かと深く知り合うということは、
    相手の名前や生い立ちやエピソードを知り集めて、そのコレクターになることではなく、
    相手の存在を許容して、自分の中にその一部を住まわせることだと思う。
    だから一度も会ったことがない人でも、
    その人の書いたものや作品や、
    その人の人生を外から見ることを介して、
    一方的に深く知り合うことが出来る。

    相手の存在からのびた影が、
    自分のなかに居座っているような状態。
    その心地よさと、恐ろしさ。

    何かを見聞きしたとき、
    その景色の中に、思考のなかに、
    自分以外の誰かの存在が潜んでいている感覚。

    水楢の木に、
    川のしぶきに、
    雨の景色に、
    日浅の存在を感じる。

    温度や色や動きのひとつひとつは、
    それだけではあまり機能しないけれど、
    ドライヤーには何も感じないのに、熱い吐息には欲情するように、
    湿度を帯びることで、急に誰かの気配を伴って、その呼吸を意識するようになる。
    読みながらずっと誰かに見られているような心持ちになり、
    そういう文章の連続が、心地よい不気味さをにじませながら、深く刺さります。

    孤独をどう捉えて、向き合うかは、
    人それぞれのものだけれど、
    わたしも心のどこかで、誰かに読んで欲しいと思いながらこれを書いているわけで。
    集合ポストに切り抜きを入れるのも、ネットに投稿をポストするのも、本質的には同じ。
    次の人の姿は身につまされる思いでページを繰りました。

    ゾクゾクする一冊。おすすめします。

  • 確かに文章はうまい。ただ、それ以上に何かあるかと言うと自分は何もなかった。気持ちいい文章だとしても、訴えかけてくる何かが薄いのは好きじゃない。前回、芥川候補になったジニのパズルとは真逆。しんせかいよりは好きかも

  • 30分くらいで読了。
    頭の中は”?”だらけ。それが狙いか?
    中盤あたりで仙台に転勤できている主人公が同性愛者と唐突にわかる。前後を読み返してえっこの主人公、女性だったんだっけと思ったほど。
    唯一、仕事仲間で友人になった男性、(釣り仲間)には恋愛感情は抱かなかったのかな。
    この男性の性格もよくつかめないままあの東日本の震災で行方不明に。その父親が絶縁した息子のことを語る素行の悪さ。きっと生きていてそのうち新聞に名前が載る(悪事をはたらいて)っと言ってたとおり。ATMを破壊して現金を盗む容疑で捕まったのが彼の同胞だったって弟想いの兄がやったってこと?
    なんかすっきりしない。もやもやが残る小説だった。
    宮本輝とかの選評(いつも厳しめ)読んでみたい。

  • 文學界で読んだが、単行本でも。
    文体と風景が大変好みです。

  • 芥川賞にしては癖が無くて素直に読める作品だった。処女作?でこれは凄いな。

  • 最初は主人公と釣り仲間との友情の話だったが、転職後から友達がいなくなり、3.11震災後に友達の秘密が、、、

  • 著者と地元が近いと知ったので手に取った。舞台は東北、静かに流れる時間、ゆったりとした地方の空気感が心地よかった。

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第157回芥川賞受賞作。大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、「あの日」以後、触れることになるのだが……。樹々と川の彩りの中に、崩壊の予兆と人知れぬ思いを繊細に描き出す。〈著者略歴〉1978年北海道生まれ。西南学院大学卒業後、福岡市で塾講師を務める。現在、岩手県盛岡市在住。本作で第122回文學界新人賞受賞しデビュー。

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