ヒマワリのコトバ-チュウイ (幻冬舎ルチル文庫 さ 2-20)

著者 :
  • 幻冬舎コミックス (2009年4月15日発売)
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信号機シリーズ伊勢×昭生の大人cp。
大人と言っても、二人が高校の同級生だった頃にまで遡って彼らの青くて未熟だった恋が仔細に描かれていて、そこに胸がチクチクさせられます。
幼少時代を過ごした昭生の家庭は、他人には到底理解しがたい複雑さがあります。16で結婚した病を抱える姉のひかりは、昭生の家族にとって女帝のような、また聖母のような存在で、誰もが逆らえない様子が伝わってきます。その中で昭生は家族の一員であろうと必死に過ごしていて、同じくひかりに尽くす義兄の滋に深く憧憬していきます。ところが、亜由美という部外者が相馬家に入り込んだことによって、純粋な年頃だった昭生は滋と自分の家族というものに幻滅していまいます。
そんな家庭での孤独感や滋への無自覚な想いに悩む昭生の前に現れたのが、同級生の伊勢。彼は同い年とは思えない辛抱強さと深い思いやりを持ち合わせていて、将来弁護士になったのは間違いなかった、適職だよねと思わせます。
屈託なく近づく伊勢に昭生も好意を持って、二人は程なく両想いに。二人のこの未熟で純粋な初恋は、滋に対する気持ちが恋だったのだと伊勢との関係で初めて気付いた昭生と、察しの良すぎる伊勢との感情の行き違いから、負のループへとその先10年間ぐるぐるすることになります。

二人とも初めての恋だったというのが、余計に相手に対しての純潔を求めてしまった気がします。「自分だけ」見つめて欲しいという有無を言わせない、まっとうな要求です。昭生が自分を滋の身代わりにしてるんじゃないかと思った伊勢にも、彼の浮気を知って傷ついた昭生にも共感できるだけに痛くて痛くて涙です。その気持ちをずるずる引きずったまま、大人になってそれでもお互い相手を切り離すこともできず、かと言って許すこともできず腐れ縁を続けているのもせつない。
でも、その中で伊勢はやっぱり成長していたというか、ずっと大人になっています。彼は互いに許しあって全てを受けとめようとしていて、愛がいっぱいでステキです。しかし、昭生が自分の気持ちに素直になって振り向いてくれるのを待ち続けていた伊勢の心の中がどんな状態だったのか考えると胸が痛いし、どうなるか見込みもないのに側にいるってすごいと思うし。
どうして自分なんかに?と昭生は言ってますが、伊勢は自分にとっての大切な人は二度と離さないと心に決めていたんですよね。

崎谷センセだけあって、絡みシーンはぶっちぎりでいいです。ただエロなだけじゃなく情感もこもっていて、せつないHから心まで一つになったHまで変化もはっきりしていて、どのシーンもよかった。
そして、エロに特化した作家さんというイメージだけじゃなく、心の琴線にふれるような表現力も群を抜いて素晴らしいなと、改めて感じました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 崎谷はるひ
感想投稿日 : 2011年11月9日
読了日 : 2011年11月9日
本棚登録日 : 2011年5月16日

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