暗渠の宿 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2010年1月28日発売)
3.65
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本棚登録 : 1032
感想 : 147
4

相変わらず西村賢太ばかり読んでいます。
本作も、ご存知、北町貫多シリーズ。
恋人欲しさにソープ嬢に入れ込む「けがれなき酒のへど」と、女と一緒に住む部屋を探す表題作「暗渠の宿」を収録しています。
どちらも読みごたえがありました。
特に、ソープ嬢に入れ込む「私」の何とも言えない滑稽さ、みじめさ。
読み手は、どう考えても主人公にとって不幸な結末が待っていると分かっているから、読んでいて同情めいたものが沸きます。
同情めいたものが沸くが、怖いもの見たさというのか、ページを繰る手が止まらなくなるのです。
読み終えて、ほーら、言わんこっちゃない。
しっかり大金を巻き上げられているではないか。
所詮は「惚れたお前が悪いのさ」ということ。
「暗渠の宿」は、これから長い年月、貫多と生活を共にする秋恵が登場。
貫多と住まいを見つけ、一緒に住み始めることになります。
貫多が秋恵と出会わなければ(つまり、西村賢太が秋恵のモデルとなる女と出会わなければ)、「秋恵もの」と呼ばれる、北町貫多シリーズでも中心を成す物語群は生まれませんでした。
そう考えると、「暗渠の宿」は感慨深いものがあります。
ええ、面白かったですとも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年7月18日
読了日 : 2022年7月18日
本棚登録日 : 2022年7月18日

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