シリーズ・企業トップが学ぶリベラルアーツ 宗教国家アメリカのふしぎな論理 (NHK出版新書 535)

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  • NHK出版 (2017年11月8日発売)
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アメリカは言わずと知れた超大国で、芸術も音楽もスポーツも優れたものがいくらもあります。
ノーベル賞の受賞数だって300以上あり、2位のイギリスの3倍と圧倒しています。
それなのに、大統領選となると、稀に頭がちょっとアレで思慮に欠ける人を選んでしまうのは何故だろうと、これは長年の素朴な疑問でした。
言うまでもなく、直近ではトランプさんですが、少し遡ってブッシュさん(特にジュニア)、かなり遡ってアイゼンハワーさんも結構なアレだったと物の本で読んだことがあります。
中でもトランプさんなんて、我が邦のどこの村にも1人はいる、尊大で金持ちの保守オヤジと大差ないですもんね。
個人的には、こういうタイプの人は愉快で気を遣わなくて済むので好きですが、国のトップとしては果たしていかがなものかと…。
で、私の長年の疑問に答えてくれそうな本が、読みやすい新書で書店に並んでいたので購入した次第。
森本あんりさんなら信頼できますしね。
結論から言うと、トランプさんみたいな人が大統領に選ばれるのは、ある種の宿命だということ。
日本では、一代で成功した成り上がり者やにわか成金には、どこか冷ややかな視線が注がれますが、アメリカでは「アメリカンドリームの体現者」として尊敬されます。
トランプさんもその価値観で評価されています。
では、その背景に何があるのかというと、キリスト教がアメリカに土着する中で生まれた「富と成功」の福音があるというのです。
三段論法で言うと、①神は、従う者には恵みを与え、背く者には罰を与える②ところで、自分は成功し、恵まれている③だから神は自分を是認している。自分は正しいのだ。―というわけです。
何だか無茶苦茶な論法ですが、アメリカでは自然と受け入れられているようです。
さらに、森本先生お得意の「反知性主義」がアメリカ社会に広く浸透していることも大きい。
反知性主義とは、知性そのものを蔑視する態度ではありません。
知性と権力の結びつきが固定化することへの反発です。
つまり有名大学を卒業したエリートだけが重用される社会に敵愾心を持っているのですね。
有り体に言えば、「エスタブリッシュメントはいけ好かねぇ」というわけです。
その背景には、ハーバード大卒の牧師が幅を利かせていた時代に、ろくに学歴もない巡回説教師が各地で説教し、大衆の支持を集めたことがあります。
説教師によっては圧倒的なパフォーマンスで大衆を熱狂させたそうで、その様は今の大統領選の熱狂ぶりにも通じるものだと、森本先生は分析しています。
トランプさんみたいな人が支持される素地が、アメリカには十分にあるわけですね。
さて、トランプさんの率いるアメリカと同盟国である我が邦の政権の担い手は、安倍さんをはじめ大半が2世、3世のエスタブリッシュメントです。
そんなことも頭の片隅に置きながら、アメリカとの付き合い方を考えていくといいかもしれませんね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年1月7日
読了日 : 2018年1月7日
本棚登録日 : 2018年1月7日

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