人間の条件 (ちくま学芸文庫 ア-7-1)

  • 筑摩書房 (1994年10月5日発売)
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人間の条件の最も基本的な要素である活動力は…労働、仕事、活動である。
労働…消費と結びついた、消費物をつくること。
仕事…人間の個体の生命を超えて存続する、「世界(各世代の居場所)」の物を作ること。
活動…日々の活動

活動─仕事─労働 の順に並んでいたヒエラルキーは、仕事─活動─労働へと変わり、近代になると労働─仕事─活動に逆転した。

労働の勝利は、「世界」を消費の対象とした。
また、労働が人間の生命の維持にのみ専心する以上、キリスト教の勃興以来、西洋の伝統の一部となった最高善としての生命が、生の哲学として復活した。

作者にとっての「公的領域」のモデル→古代ギリシアのポリス。ポリスでは活動と言論により、自分は何者であるかの正体を暴露し、単に生きるための必然から解放され、自由を獲得した。
経済はポリスでは本来、家族的なものすなわち非政治的なものであったが、国民国家の勃興によって家族を拡大させた「社会」が出現、公的領域が消滅した。
労働が勝利を収めるに従って、公的領域と私的領域の境界線は曖昧になり、「社会」が勃興。社会の中では、自分が他人と同じであることを示す「行動」が人間領域を支配した。

労働の優位の政治的表現→社会主義。
これに加え、作者は労働優位と経済重視の資本主義社会も批判した。

公的領域で活動し言論することが人間の条件の決定的な部分を成すならば、普通の市民の政治参加を保証し拡大する課題は、政治論の中心に置かれねばならない。

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感想投稿日 : 2020年6月28日
読了日 : 2020年6月28日
本棚登録日 : 2020年6月28日

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