イノベーションのジレンマ 増補改訂版: 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき

  • 翔泳社 (2001年7月1日発売)
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【まとめ】
1 持続的技術と破壊的技術
優良経営企業の場合、すぐれた経営こそがリーダーの座を失うことにつながる。これらの企業は、顧客の意見に耳を傾け、顧客が求める製品を増産し、改良するために新技術に積極的に投資したからこそ、市場の動向を注意深く調査し、システマティックに最も収益率の高そうなイノベーションに投資配分したからこそ、リーダーの地位を失ったのだ。

●持続的技術
製品の性能を高める新技術。主要市場のメインの顧客が今まで評価してきた性能指標にしたがって、既存製品の性能を向上させる。
●破壊的技術
従来の顧客が求めていたもの、今までの市場にあったものとは全く違う性能をもった新技術。

大企業は持続的技術には投資をするが、破壊的技術には積極的に投資をしない。その理由は3つある。
①破壊的製品のほうがシンプルかつ低価格で、利益率も低いから
②破壊的技術が最初に商品化されるのは、一般に、新しい市場や小規模な市場であり、投資額に見合った旨みがないから
③破壊的技術は、初期段階ではニーズを満たせるほど性能が良くないから 

持続的技術…ガラケーの性能向上
破壊的技術…スマホの登場
と読み替えるとしっくりくるかもしれない。

最初は小さな芽だった破壊的技術の企業が、しだいに大きな企業に取って代わるほどの大企業に成長し、市場を席巻する。優秀な企業ほど、この破壊的イノベーションを取り入れることができず、やがて業界から追い出されることになる。これが「イノベーションのジレンマ」だ。


2 破壊的技術の5つの原則
大企業は、以下の5つの原則に逆らおうとするときに失敗する。これらの原則と対峙するのではなく、調和し順応することが大切。

①企業は顧客と投資家に資源を依存している
経営者は会社の資源の流れを自分が管理していると考えているかもしれないが、実際は顧客と投資家を満足させるパターンを取っている。すぐれた企業ほどこの傾向が強く、顧客が望まないアイデアを排除するシステムが整っている。そのため、顧客が望まず利益率の低い破壊的技術に、十分な投資がされないままチャンスを逃してしまう。

②小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
企業が成長して大きくなると、将来大規模になるはずの新しい小規模な市場に参入することがしだいに離しくなってくる。成功している企業は、株価を維持し、社員の職務範囲が広がるようチャンスを設けるため、成長しつづける必要がある。しかし、4000万ドルを売り上げる企業が20%の成長率を達成するには、翌年の売上高を800万ドル増やすだけでよいが、40億ドル企業では8億ドルの増収が必要である。これほどの規模を持つ新市場はない。そのため、組織が大規模になり、成功するにしたがい、新しい市場を会社の原動力とすることに無理が生じてくる。

③存在しない市場は分析できない
優秀な企業は、投資の段階で市場規模や収益率を数量化してから参入する。ところが、破壊的技術が起きる市場は事前に察知できない。

④組織の能力は無能力の決定要因になる
破壊的技術を生み出すためには組織的能力が必要になる。組織の能力は二つの要素によって決まる。
一つはプロセスである。これは、組織の人員が習得した労働力、エネルギー、技術、資源といった「インプット」を価値の向上という「アウトプット」に変える方法である。
もう一つは組織の価値基準である。これは、組織の経営者や従業員が優先事項を決定するときによりどころとする基準である。
人間はきわめて柔軟性が高く、訓練しだいでさまざまな物事をうまくやれるが、プロセスや価値基準に柔軟性はない。大企業においては組織の能力を生みだすはずのプロセスや価値基準も、破壊的技術に対応するための業務に当てはめようとすると、効率が悪化する。

⑤技術の供給が需要を超えてしまう。
いわば「顧客が必要としていない技術を無駄に追加してしまう」現象。
競合する複数の製品の性能が市場の需要を超えると、顧客は、性能の差によって製品を選択しなくなる。製品選択の基準は、性能から信頼性へ、さらに利便性から価格へと進化することが多い。
企業は、競争力の高い製品を開発し優位に立とうとするために、急速に上位市場へと移行する。多くの場合、高性能、高利益率の市場をめざして競争するうちに、当初の顧客の需要を満たしすぎたことに気づかない。そのため、低価格の分野に空白が生じ、破壊的技術を採用した競争相手が入り込む余地ができる。


3 破壊的技術に直面したときは
①既存顧客から離れ、破壊的技術の開発を、そのような技術を必要とする顧客がいる組織にまかせ、プロジェクトに資金が流れるようにする。

②小さな市場に対応できるよう、組織を独立させたり買収したりしながら、小規模組織を作る。

③トライ・アンド・エラーを繰り返す。破壊的技術を商品化するための初期の努力は、学習の機会と考え、データを収集しながらアジャイルしていく。

④早い段階から行動し、現在の技術の特性に合った市場を見つける。既存の主流市場とは別の、魅力の薄い新しい市場が、破壊的技術をつくり出す要因になる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月24日
読了日 : 2022年2月23日
本棚登録日 : 2022年2月23日

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