女性視点の私小説風の短編でまとめられた一冊。
表題作が描くのは、天使と娼婦に同時に憧れ、自らを愛しながら疎む、ザ・思春期…こういう言い方をすると安っぽくなってしまって申し訳ないのだけれど、それが安くなく非常に上手いのがさすが。
他の作品もガラス窓をそっと爪で引っ掻くような、小さいけれど忘れられない音がした。
特に、「おさん」がお気に入り。
「男のひとは、妻をいつも思っていることが道徳的だと感ちがいしているのではないでしょうか。他にすきなひとが出来ても、おのれの妻を忘れないというのは、いい事だ、良心的だ、男はつねにそのようでなければならない、とでも思い込んでいるのではないでしょうか。(中略)ひとを愛するなら、妻を全く忘れて、あっさり無心に愛してやって下さい。」
ため息が出るほど文章自体も中身も見事な一作だった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2014年10月14日
- 読了日 : 2014年10月14日
- 本棚登録日 : 2014年9月11日
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