あそこへ行けば、ここにないものが手に入る。仕事が、食料が、医療が、新しい人生が拓けるにちがいない。
そう思って彼の地を目指すうちに絶命していった者たちは、命を削って彼の地にたどり着いた者よりも、もしかすると幸せなのかもしれない。
西暦2154年、人口爆発と環境破壊により荒廃した地球は総スラム化し、人々は過重な労働を強いられていた。地球から400㎞上空のスペースコロニーで支配者層が政治を動かし、ロボットを使って地球を管理しながら不自由なく暮らす様は、現代の階級社会の縮図ともいえる。
地球で働く主人公マックスは致死量に近い放射線を浴び、エリジウムにある医療ポッドで治癒せんがため、レジスタンス組織に協力して彼の地を目指す。
今作は貧富の格差と共に、アメリカ合衆国の医療保険制度に対する(ほとんど直接的な)批判が下敷きになっている。物語は、マックスが命がけで、地球の貧民たち全員をエリジウム市民として承認させるよう管理システムのプログラムを書き換えるところで終わっている。ほとんどあらゆる病気やケガを治す最先端医療を地球人全員の手に解放した。
だがそれは一方でこれまで以上の人口爆発の引き金にもなってしまう。支配者層が崩壊していく未来は目前だと思われるが、エリジウムコロニーに全ての地球人が不自由なく暮らせるようになる環境もなければ富も足りない。娯楽作品とはいえ、あまりにディストピアを予感させる結末であった。
「本当は近未来デザイン大好き!ガジェットのデティールにはこだわりまくりだお!戦闘シーンには美学が詰まってまふ!」
みたいな旧世代ジャパニメオタが「SF超大作」を作らされてる感じは、00年代以降当たり前になってしまっているようだ。そちこち(ラストの格闘シーンとか)にオタ臭が漂っている。日本人でも純粋にアンビリーバブルと驚嘆させられる未来描写がもっと見たかった。贅沢かしら?
- 感想投稿日 : 2013年10月6日
- 読了日 : 2013年10月6日
- 本棚登録日 : 2013年10月6日
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