なぜ男女の賃金に格差があるのか:女性の生き方の経済学

  • 慶應義塾大学出版会 (2023年3月31日発売)
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ノーベル経済学賞のニュースを見て、これは早めに図書館で予約しなければと借りた本。

会社の働き方・慣習・風土への不満。
だから女性が働きやすくならないのだ。
育児参加したい男性なんてさらには気遣ってなんてもらえない。
この会社は嫌だ辞めたい!
と仕事・育児・家事でギリギリの状態になると考えてしまうのは多くのワーママにあると思う。

でも会社単体の問題でもない、業種の問題でもない、国家さらには世界での、また今という時代だけでなく100年前からの根深い問題なのだと本書は提起している。

長時間労働時間という仕事・育児・家事の両立の敵はいつやっつけることができるのだろうか。
自分の子どもが社会人になるまでには絶対にMUSTだが、自分の職場の後輩がこれから産休・育休・復帰を迎える時にこんな苦労をしてほしくない。今すぐに解消にとりかかってほしい。

◆メモ
・ジェンダー格差が起きる→会社が軽い叱責を受ける→役員に昇格ふる女性がひとり増える。育休を取るリーダーが数人増える。
これは病気になった人にバンドエイドの箱を投げ渡すようなもの。
・女性の職業が男性の分布に従ったとしても男女収入差のせいぜい3分の1しか消し去ることはできない。
・「家庭」は子どもを持つことを定義とし、必ずしも配偶者はいなくてもよい。夫と犬という家族はいても、彼らは家庭を構成していない。
・「キャリア」は人生の歩みであり、一定期間の継続が必要。キャリアには進歩と忍耐強さを伴う。
・「ジョブ(仕事)」は自分のアイデンティティや人生の目的の一部にはならない。収入を生み出すためだけのもの。
・過去一世紀の変遷①家庭かキャリアか→②仕事のあとに家庭→③家庭のあとに仕事→④キャリアのあとに家庭→⑤キャリアも家庭も
・経済学用語(GNP,GDP)の概念に今は慣れてしまっているが、この概念は最近編み出されたものであることに私たちは気づいていない。
・1930年代初頭米国経済不況時に国民の生産能力測定のシステムを構築するにあたって、女性の家庭での労働力と市民消費のかなりの部分を占める商品やサービスを生産していることを計算に含めるかの議論があった。
・コロナ後の世界では在宅勤務の期間を増やすようになった。リモートワークは特に子育て中の親に長期的な有益効果をもたらすかもしれない。しかし、保育園・学校の休校を繰り返す影響として、これまで以上に男女格差が際立つ可能性がある。コロナ以前より片方の親が家にいなければならない時間が増えるため。
・世代や職種を問わず、時間はキャリアと家庭を求める女性にとって敵になる。
・育休を利用する男性が増えている。しかしその前に企業は休暇を取得した男性が将来的にペナルティを受けないように、全員から賛同を得なければならない。
・アメリカは、デンマークフランススウェーデンのように幼い子どもの世話は地域社会の責任であるという考え方を受け入れてこなかった。
・日本はデンマークスウェーデンドイツと比較し、出産による収入減とその後の回復が弱い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年11月17日
読了日 : 2023年11月18日
本棚登録日 : 2023年11月7日

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