なぜ男女の賃金に格差があるのか:女性の生き方の経済学

  • 慶應義塾大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766428476

作品紹介・あらすじ

女性たちはどのように「家族」と「仕事」を選択してきたのか。
ウーマンリブ、「静かな革命」、リリー・レッドベター公平賃金法など、20世紀以降を振り返りながら、各職業のデータを経済分析し、女性の賃金の上昇を阻む原因を抉り出す。
アメリカのみならず世界の先進国の男女の「働き方」を見直すきっかけとなる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • ノーベル経済学賞のニュースを見て、これは早めに図書館で予約しなければと借りた本。

    会社の働き方・慣習・風土への不満。
    だから女性が働きやすくならないのだ。
    育児参加したい男性なんてさらには気遣ってなんてもらえない。
    この会社は嫌だ辞めたい!
    と仕事・育児・家事でギリギリの状態になると考えてしまうのは多くのワーママにあると思う。

    でも会社単体の問題でもない、業種の問題でもない、国家さらには世界での、また今という時代だけでなく100年前からの根深い問題なのだと本書は提起している。

    長時間労働時間という仕事・育児・家事の両立の敵はいつやっつけることができるのだろうか。
    自分の子どもが社会人になるまでには絶対にMUSTだが、自分の職場の後輩がこれから産休・育休・復帰を迎える時にこんな苦労をしてほしくない。今すぐに解消にとりかかってほしい。

    ◆メモ
    ・ジェンダー格差が起きる→会社が軽い叱責を受ける→役員に昇格ふる女性がひとり増える。育休を取るリーダーが数人増える。
    これは病気になった人にバンドエイドの箱を投げ渡すようなもの。
    ・女性の職業が男性の分布に従ったとしても男女収入差のせいぜい3分の1しか消し去ることはできない。
    ・「家庭」は子どもを持つことを定義とし、必ずしも配偶者はいなくてもよい。夫と犬という家族はいても、彼らは家庭を構成していない。
    ・「キャリア」は人生の歩みであり、一定期間の継続が必要。キャリアには進歩と忍耐強さを伴う。
    ・「ジョブ(仕事)」は自分のアイデンティティや人生の目的の一部にはならない。収入を生み出すためだけのもの。
    ・過去一世紀の変遷①家庭かキャリアか→②仕事のあとに家庭→③家庭のあとに仕事→④キャリアのあとに家庭→⑤キャリアも家庭も
    ・経済学用語(GNP,GDP)の概念に今は慣れてしまっているが、この概念は最近編み出されたものであることに私たちは気づいていない。
    ・1930年代初頭米国経済不況時に国民の生産能力測定のシステムを構築するにあたって、女性の家庭での労働力と市民消費のかなりの部分を占める商品やサービスを生産していることを計算に含めるかの議論があった。
    ・コロナ後の世界では在宅勤務の期間を増やすようになった。リモートワークは特に子育て中の親に長期的な有益効果をもたらすかもしれない。しかし、保育園・学校の休校を繰り返す影響として、これまで以上に男女格差が際立つ可能性がある。コロナ以前より片方の親が家にいなければならない時間が増えるため。
    ・世代や職種を問わず、時間はキャリアと家庭を求める女性にとって敵になる。
    ・育休を利用する男性が増えている。しかしその前に企業は休暇を取得した男性が将来的にペナルティを受けないように、全員から賛同を得なければならない。
    ・アメリカは、デンマークフランススウェーデンのように幼い子どもの世話は地域社会の責任であるという考え方を受け入れてこなかった。
    ・日本はデンマークスウェーデンドイツと比較し、出産による収入減とその後の回復が弱い。

  • 感想
    どちらも求められる。家族が、社会が圧力をかける。能力に差はない。しかし要求があまりにも大きい。十分に能力を発揮できない。格差は残る。

  • 【試し読み】なぜ男女の賃金に格差があるのか|慶應義塾大学出版会 Keio University Press|note
    https://note.com/keioup/n/nba3313b517e5

    Claudia Goldin
    https://scholar.harvard.edu/goldin/home

    慶應義塾大学出版会 | なぜ男女の賃金に格差があるのか | クラウディアゴールディン 鹿田昌美
    https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766428476/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      世代超え女性たちがつなぐバトン ゴールディン氏研究、共感した訳者:朝日新聞デジタル(有料記事2023年10月11日)
      https://www...
      世代超え女性たちがつなぐバトン ゴールディン氏研究、共感した訳者:朝日新聞デジタル(有料記事2023年10月11日)
      https://www.asahi.com/articles/ASRBC3FHMRBBULFA03L.html

      ノーベル経済学賞ゴールディン教授が解明した「世代別の進歩」:日経ビジネス電子版(2023.10.19)
      https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00351/101600106/
      2023/10/23
  • ジェンダーギャップを学ぶシリーズ第2弾。100年間の女性の社会進出を分析し、男女の賃金格差について考察している。世界的に見ても性別が違うというだけで賃金格差があるということを再認識。しかも、先進国・途上国を問わない。高等教育終了時点では、修了者数、成績等むしろ女性の方が評価されている。しかし、5年後ではほぼ変わらない年収が、7〜8年後から差がつき始め、15年後には大きく開いていわゆる鰐の口となる。本書ではこの原因の一つとして、労働のタイプをあげている。特に高給な業務では、不定期な労働時間(夜中だろうが休日だろうが呼び出されたり、為替の変化等に対応したりすること)、非定型業務(新規事業開発やリスクの高い業務に取り組むこと)に対応することが求められる。これを貪欲なポジションと呼ぶ。一方、保育園からの呼び出しや年老いた親の介護、趣味など、個人の時間を優先する業務を柔軟なポジションと呼ぶ。平等な家庭を目指し結婚したカップルであっても、貪欲なポジションをどちらが担うかを検討した際に男性が担うことが多く、子育てなどのイベントが終了した後でも、格差は埋まらないという分析。もちろん逆パターンもあるのだろうけど。他にも職業別の分析もあり、日本でも身近なところにある課題であり、勉強を続ける必要がある。

  • ノーベル経済学賞ということで読んだ本。
    研究結果をまとめた、という形で、本としては少し読みづらさを感じた。
    記載されていることは至ってシンプルで、仕事の重要な時期と子育ての時期は重なり、どちらにどれだけ時間を割くかという話になる。仕事に時間を割くほど時給換算の給料が上がるシステムなので家庭内の平等を取ろうとすると世帯としての収入は損なわれる、というもので、これまで感じてきたことがデータに基づき記載されていた。
    大学卒の学歴の高い女性に限定して、100年のわたって仕事と家庭への関わり方を研究した、というのは興味深かった。

    女性がピルという武器を手に入れたという記載があったが、今日においても日本ではピルはそこまで浸透しておらず、この部分だけみても日本は欧米からだいぶ遅れをとっているよな、とは感じた。家事育児に費やす時間も依然として世界トップレベルでもあり、日本女性の苦労が軽減していく方向にもっと進んでいってほしい。

    男性のみが社会での労働力だっただったころは、女性が主な担い手であるケアの重要性について気に留める必要はなかったが、女性が労働力のおよそ半分を占め、人手不足もあり、主に若い世代の男性意識の変化もあるなかで、企業の重役もケア労働に目を向けざるを得なくなってきていると思う。AIの登場などにより、仕事の質自体も変化していく時代の流れの中で、長時間労働できる人材が好ましい、という価値観から、短い労働時間でアウトプット出していける人材の評価を高めていく方向へシフトして行ってほしいと感じた。

  • 女性の方が賃金が低くなる問題について、過去100年間を5つの世代に分け、世代ごとの流れから解説を試みようとしている

    現代では仕事により多くの時間を使える人が評価され、高給を得る職業が人気となっている((弁護士、会計士など)
    しかし子供がいる場合、24時間対応が必要な仕事を望む女性は少なく、代わりに男性が仕事に多くの時間を使うため、結果として賃金格差が生まれている
    女性への嫌がらせで賃金を下げるようなことは少なくなっているが、高給を得るためには長時間労働が必要→子供がいると長時間働けない→賃金が増えないのループで格差が発生しているのは、理解できる話だった

    経済本のため前半3分の2くらいが各世代の女性のデータの解説で、しかもアメリカ女性のデータなので知らない人や内容が多く読むのがしんどかったけど、最後の格差発生の解説パートは興味深かった

  • 他の人と同様でノーベル賞受賞者の本なので読んでみた。
    男女の賃金格差は、職種の傾向以上に、女性がキャリアを築くべき期間に育児で働ける時間が減ることによって生じる。コロナ禍では女性の方が経済的なダメージを受けた。日本も共通するしもっともなんだが、生成AIによると「2022年のOECDのデータによると、日本の男女の賃金格差は21.3%です。これはOECD平均の2倍の水準で、米国(17%)、英国(14.5%)よりも高い」ハルシネーションだとしても日本が低レベルなのは周知の通り。ジェンダーギャップ指数で米国27位が北欧の背中を見ているにしても、日本は116位。日本はゴールディン氏が分析する以上に深刻な問題を抱えている。米国では新しい世代はキャリアも結婚や子育ても両立するようになってきているというではないか。日本は女性に不利な状況が一向に解決せず、非婚や少子化が進む一方である。もちろんピルもない。また、子育てでいったん中断して遅い年齢でキャリアを築くというパターンが日本で起きにくいのは、ジョブ型(能力やスキルがあれば後からでも望む仕事に就ける)とメンバーシップ型(いったん離脱すると復帰不可能)の差もあるだろう。
    ともかくも、日本は本書の問題提起以前のレベルなので、ゴールディン氏に続くどなたかには、日本の男女格差を真剣に研究していただきたい。

  • 出版社(慶応義塾大学出版会)ページ
    https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766428476/

    原著
    Goldin, Claudia. Career & Family: Women's Century-Long Journey toward Equity. Princeton, NJ. Princeton University Press, 2021.
    (『キャリアと家族:平等を目指す女性の1世紀にわたる旅』)
    コーホート分析


    安田洋祐による紹介記事「歴史とデータが明らかにする男女格差 」
    https://note.com/yagena/n/n64fe10044672

  • 少しでもこの本を読んで女性の生き方が変われば嬉しいですね。
    特にエピローグに書かれているコロナ禍で子どものために仕事と家庭で葛藤する女性。

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著者プロフィール

ハーバード大学ヘンリー・リー経済学教授。経済史家であり労働経済学者。研究テーマは、女性の労働力、所得における男女格差、所得不平等、技術革新、教育、移民など多岐にわたる。2013 年にアメリカ経済学会会長、2000 年に経済史学会会長を務める。米国科学アカデミー会員。著書The Race between Education and Technology(L・カッツとの共著)で、2008 年R.R. ホーキンス賞を受賞。マサチューセッツ州ケンブリッジ在住。

「2023年 『なぜ男女の賃金に格差があるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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