これは130年以上前の明治時代の日本を、日本人従者ひとりだけ連れて旅した英国のおばさん探検家が妹に書き送った日記である。
概略を一言で言ってしまえば、終始歯に衣着せぬ物言いで日本を誉めまくっては貶しまくる大変正直で実用的な日本探検ガイドブックだ。
日本の景色・日本人の気質・日本の建物や風物などは非常に高く評価していて誉めまくっている。逆に日本の衛生面・道路事情・迷信的習慣については悪態をついてつきまくる。しかしこの本からは先入観や差別感情は排除されているし、そうするように努めたとの記述もある。それは彼女の旅行が学術的な使命を帯びたものであることを彼女自身が自負していたからであろうし、また彼女が外国人未踏の地であった明治時代の北日本に(従者付ではあるが)単身で乗り込むような女傑だったという性格も無意識的に作用していたことだろう。
また褒貶どちらの場合にもその様子については挿絵入りでたいへん細かく描写されており、現代の研究者をうならせるレベルで彼女が意図したとおりにその学術的な価値は高い。
そうして可能な限りフェアに描写された明治日本をながめて思うのは、たかだか130年くらいでは当時の日本人の気持ちが分からなくなるほどには私たち日本人の気質というものは大きく変わるものではないということである。そして既に失われてしまった日本の風景とともにそこで暮らす日本人の様子が彼女の目を通してではなくまるで自分で見てきたようにありありと目の前に広がっていくように感じるのだ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2012年7月15日
- 読了日 : 2012年7月15日
- 本棚登録日 : 2012年6月25日
みんなの感想をみる