本当はひどかった昔の日本: 古典文学で知るしたたかな日本人 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2016年8月27日発売)
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<目次>
はじめに
第1章  捨て子、育児放棄満載の社会~昔もあった大阪二児餓死事件
第2章  昔もあった電車内ベビーカー的論争~「夜泣きがうるさい」と子を捨てるようなシングルマザーに迫る村人たち
第3章  虐待天国江戸時代~伝統的「貧困ビジネス」の実態
第4章  本当はもろかった昔の「家族」~虐待の連鎖も描かれていた「東海道四谷怪談」
第5章  マタハラと呼ぶにはあまりに残酷な「妊婦いじめ」
第6章  毒親だらけの近松もの
第7章  昔もあった介護地獄から舌切り雀の実態
第8章  昔もあったブラック企業~リアル奴隷の悲惨な日々
第9章  昔もいた?角田美代子~家族同士の殺戮という究極の残酷
第10章  いにしえのストーカー殺人に学ぶ傾向と対策
第11章  若者はいつだって残酷~「英雄」か「キレやすい若者」か
第12章  心の病は近代文明病にあらず
第13章  動物虐待は日常茶飯~そして極端なペット愛好
第14章  究極の見た目社会だった平安中期
第15章  昔から、金の世の中

<内容>
2014年刊の単行本の文庫化。大塚ひかりさんは、古典を解釈するだけでなく、現代の世の中に反映させることに長けている。なので、こうした人が先生なら、「古典」の授業はとても役に立つ(役に立つだけじゃダメなのかな?)。そして、現在世相をバッサッと斬ってくれる。例えば、平安中期(摂関政治の貴族文化全盛期ですね)は、「見た目が90%」どころか、100%だった可能性が。もしも美容整形の技術がこの時代にあったら、現代の韓国社会顔負けの「美容整形」ブームだったかも。また、ブラック企業はいつの時代もあったとか、介護地獄やストーカーや心の病も現代特有のものではない、と読み解く。ときどき世の論者と言われる人たちが、訳知り顔で「現代社会特有の~」と言っているが、人間いつまでも変わらない生き方をしているんだ。「絆」と言ったって、昔から「ひきこもり」はいたし、「少年犯罪」は残酷だったし、何も変わりはなかった…。安心すべきか、対策もないな、と諦念すべきか…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国語
感想投稿日 : 2016年10月1日
読了日 : 2016年9月30日
本棚登録日 : 2016年9月8日

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