恩地が去ってからの本社には、会社の御用組合である第二労働組合ができる。
第二労働組合は第一労働組合から人員を引き抜いた為、第一組合へ残る組合員はわずかな人員となった。
恩地が後を託した第一組合の委員長の沢泉からの郵便メールで、現在の第一組合の実情を知らされる。
かつての労働組合の幹部は劣悪な環境の売却資材倉庫や資料管理室へ追いやられた。第二組合に移籍しない、第一組合員は、第二組合の人間の監視のもと、支店に日がな一日椅子に座らせられて、無為に過ごすことを強制されていた。
話を聞かされた恩地は憤り、本社への不当人事に対抗する憤りを募らせた。
パキスタンからイラン、そしてケニアへと、僻地をたらい回しにされた恩地は次第に心が荒んでいく。
恩地は週末のみのサラリーハンターとして、アフリカの地で、獣を狩る日々に、なんとか心のバランスを保っていた。
そんななか、沢泉からの連絡で、僅か五ヶ月の間に三度もの事故を起こす国民航空の現状を知らされる。
128人の乗客の命を失う連続事故を起こしたにもかかわらず、本社の運行管理者は横滑りの人事交代のみで、その無責任体制は続いていた。
事故をきっかけに国会で、衆議院交通安全対策委員会が開かれた。
これにより、国民航空の労働規約違反が白日のもとにさらされ、恩地はようやく日本への帰還ができることと成った。
恩地を、しぶしぶ日本へ戻すことに同意した労務部長の八馬忠次、副社長の堂本信介は、帰ってくる恩地に対する処遇を巡らした。
日本へ帰れることに成った恩地の荒んだ心は晴れ、家族のもとへ帰れるという希望を持った。
沢泉委員長が国会で、不当人事の状況を説明し、恩地への報復人事を証言する場面は、読んでいて心がスッとした。
三度もの連続航空機事故を起こしながら、変わらない本社役員の体質に憤りを感じつつ、あの稀に見る、御巣鷹山への航空機墜落事故の大惨事へと繋がっていく。
次巻へとつづく。
- 感想投稿日 : 2024年3月16日
- 読了日 : 2024年3月16日
- 本棚登録日 : 2024年3月16日
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